423部分:第三十二話 誠意その六
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第三十二話 誠意その六
「それが上手くいき過ぎて怖いんですけれど」
「そっちは上手くいっていてもだ」
「他のことで」
「例えば友人関係だな」
先生は人間関係をその話に出した。
「それだな」
「友人関係ですか」
「何処かで悪くなってないか。そっちはどうだ」
「別に・・・・・・いや」
否定しようとした。しかしだった。
陽太郎はここでだ。星華のことを思い出した。あの絶好の時から意識して否定してきた彼女のことをだ。ここで思い出したのだった。
「ええと」
「あったな」
「はい、ありました」
こう話す彼だった。
「けれどあれは」
「御前はそのことを何とかしたいと思っているな」
「そうなんですか」
「人には意識と無意識がある」
先生が今度出してきたのはこの二つだった。道場の中の剣道部が使っている部分においてだ。面と小手を外した道着姿で話すのだった。
「意識では否定していてもだ」
「無意識ではですか」
「そうだ、そちらではどうか」
こう話すのだった。
「それはとてもわかりにくい」
「わかりにくいですか」
「自分では気付いていないからな」
それが無意識だというのである。
「気付くことすら厄介だ」
「そうですか」
「しかし気付けばだ」
先生はそこからも話すのだった。
「それをどうするかできるな」
「じゃあ俺は」
「少し考えてみろ。人間は常に幸福と不幸の中にいるものだ」
先生の今の言葉を聞いてだ。また周りが話す。
「じゃあいつも幸福ばかりじゃないんですか」
「不幸ばかりでもない」
「その二つの中にいつもいるんですか」
「人間ってそんなものなんですね」
「そういうものだ」
また話す先生だった。
「幸福だけ、不幸だけの人生なんてない。いや」
「いや?」
「いやっていいますと」
「幸福と不幸は常に五分五分で混ざり合っているものだ」
そうだというのだった。
「それが人生だ」
「じゃあ俺も」
「彼女とのことが上手くいっていても」
先生は陽太郎にあらためて話した。
「それでもだ。友人とはな」
「あいつとは」
あえてだった。星華の名前は周りには出さなかった。
「そういうことですか」
「それでだ」
「はい」
「何とかしたいか」
先生は陽太郎にそのことを直接尋ねた。
「そう思うか」
「それは」
「何かあったら何とかするといい」
これが先生の今度の言葉だった。
「是非な」
「何かあるとですか」
「一概には言えないが機会は来るものだ」
先生は陽太郎にこうも話した。
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