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汝(なれ)の名は。(君の名は。)
01入れ替わり
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が触れた部分は、濡れタオルのおしぼりで入念にふき取り、汚らわしいものに気を奪われたかのように、集中作業を再開した。
 相手側は、今後手を洗わないぐらいの決心をしたにも関わらず。
「フンッ」
 一瞬、貰ったばかりのお守りを、汚物のようにゴミ箱に放り込もうと思ったが、神社の縁起物を粗末に扱うと、勝利の女神にも見放されそうだったので、それだけはやめておいた。
 それは案外正解で、四葉には姉より強い心霊力が備わっていて、その念は現実を書き替えたり、星を呼べるほど強力だったので、猛は大きな願いによって守られ、県大会で優勝した。

 冬守寄合所、高床式住宅

 その後、興奮して大喜びして、友人達とのカラオケでも大はしゃぎ、泣いて叫び過ぎて中々眠れなかった四葉は、床の上で目を覚ました。
 それも丸太小屋のような、碌に製材も行われていない床と天井。
 枝を払っただけの丸太で組まれた倉庫で、適当に藁などで詰め物をして、その上に藁で作った「ござ」を敷いてあるだけの堅ったい床。
「え〜〜? 何で〜〜? ベッドから落ちた? 今日キャンプだっけ? って言うか臥薪嘗胆(ガシンショウタン)〜?」
 特に願掛けのために、中国の呉越の故事をまねて、薪に伏して苦い肝を舐めていたわけではないが、ムクムクする軍曹殿のアンゴル・モアさんみたいな話し方をした。

 目が覚め始めて、多少難しい思考もできるようになって来たが、亡くなったはずの一葉お婆さんが、脈を確認しながら上から覗きこんでいた。
「お祖母ちゃん!? 去年死んじゃったはずなのに? え? アタシも死んだ?」
 とりあえず自分の頬を抓ってみて、夢ではないかと確認する。
 現代の女子高生らしい素っ頓狂な話し方をしているが、古代の人間には通じない。
 魂や霊体が入れ替わる時に、「このすば!」のアクアみたいに女神的なアレで古語を話していて、言葉は通じるようになっていたが、文法が女子高生言語なので現地人には通じない。
「目が覚めたかシヨウ。いや、神が降りて来られて出雲の神様になっておられるか?」
「ハァ?」
 よく見ると、祖母の格好も洋服でも和服でもない変な恰好。藁の上着まで羽織って腹回りをロープのようなひもで縛ってある。
 顔にも入れ墨、体青、まじないの文様が腕や体、顔にまで書かれている。
「うっわ、どこの部族よ?」
 髪型も「大和朝廷〜」とか「大国主命〜」と言って遊んだり、教科書に落書きするような古代の髪型で、紐で頭の両脇に縛り付けてある。
 自分の格好も寝間着でも巫女装束でもなく、ガッサガサの服に何か巻いてあるだけの下着、勾玉だとか、首や手首にも動物の牙とか変な装飾が付いていて、狼か何かの皮を頭から被っていた。
「エ? ココドコ? オバアチャンジャナイ? アタシうまるチャン? モノノケ姫?」

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