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空に星が輝く様に
414部分:第三十一話 夜の港でその九
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第三十一話 夜の港でその九

 階段に足を踏み込ませる。そこでだった。
「何か。今になって」
「そうよね」
「ちょっとね」
 三人はそれぞれ顔を暗くさせて見合わせ合った。
「行かないといけないけれど」
「わかってるのに」
「今になって」
「そうですよね」 
 星子もだ。その三人に言うのだった。
「私も。ちょっと」
「足が。何か」
「自然と動きにくくなって」
「動いて欲しいのに」
「ええ、どうしても」
 しかしそれでもだった。四人は階段を登っていく。己と戦いながら。
 そうして着いたのだった。その部屋の前にだ。
「ここよね」
「そうよね、この部屋よね」
「この中にいるのね」
 三人は褐色の木の扉を前に見ながらここでも言い合う。
「星華ちゃん、ずっと」
「この部屋に引き篭もって」
「そうしてるのね」
「お風呂は入ってますけれど」
 ここで星子は三人にこのことも話した。
「それでも」
「えっ、お風呂って」
 それを聞いてだった。野上があることに気付いたのだった。
 それでだ。すぐに怪訝な顔で星子に尋ねた。
「あの、それ本当?」
「はい、そうですけれど」
 星子はここでは何でもないといった調子で野上に問い返した。
「それが何か」
「そう。身だしなみはしっかりしてるのね」
「お姉奇麗好きですから」
 これも星華のいいところなのだった。女の子だから当然だが彼女は風呂だけでなく掃除や洗濯もよくしているのである。
 そのことは星子も知っていた。だがあまりにも知り過ぎてなのだった。
「あの、それが何か」
「だから。そこまで我を失っていないのよ」
 野上が言うのはこのことだった。
「最後の最後までね」
「そうなんですか」
「ええ、それだと」
 野上の顔に希望が戻った。そうして話すのだった。
「望みがあるわ。説得できるわ」
「できますか」
「ええ、できるわ」
 また言う野上だった。
「星華ちゃん立ち直るわ」
「そうですか。じゃあ」
「行こう」
 野上は星子と残る二人に声をかけた。
「それじゃあね」
「ええ、望みはあるのね」
「だったら」
 それを聞いてだった。州脇と橋口の顔に生気が戻った。
 そしてだった。星子もだった。
「お姉、じゃあ」
「行こう、本当にね」
 また野上が来てだった。そうしてだった。
 星子がなのだった。そのドアノブに手をかけたのだった。
 そうしてその扉を開けた。そこにいたのは。
 星華だった。紛れもなく彼女だった。しかしなのだった。
 星華はベッドの横に蹲ってだ。そうして泣いていた。膝をその両手で抱えてそのうえでだ。しくしくと泣いていたのだった。ベッドの他には机と本棚、それとクローゼットの他は特に何もない女の子の部屋にしては
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