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真田十勇士
巻ノ百四十八 適わなかった夢その十四
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「誰もいなくなります」
「あそこまで身内で争ってばかりだとな」
「幕府は滅びます」
「だから大御所様もそれは戒められしかもじゃ」
「尾張と紀伊、やがては水戸に」
「三つの家に江戸の徳川家に何かあればじゃ」
 その時はというのだ。
「跡を継ぐ様に定められたのじゃ」
「そこまでお考えですね」
「血が絶えてはならぬ」
 断じてと言う秀忠だった。
「若し絶えればな」
「源氏の二の舞ですね」
「ああなってはな」
「だからこそ三つの家をそれぞれ置き」
「兄弟同士の殺し合いもな」
 それもというのだ。
「慎むべきじゃ」
「そして竹千代と国松も」
「それがない様にしてもらいたいな」
「まことに。確かに私は国松を可愛がっていますが」
 お江もこのことは認めた。
「ですが」
「それでもじゃな」
「はい、竹千代も我が子です」
 このことには変わりがないというのだ。
「ですから」
「兄弟で殺し合うなぞな」
「絶対にあって欲しくないです」
「余とそなたの目が黒いうちはそれはさせぬことじゃ」
「何があろうとも」
「そうしようぞ」
「はい、それは」
 二人で頷き合う、そしてだった。
 秀忠は朝起きると幕臣達に言った。
「竹千代と国松はどうしておる」
「はい、昨日もです」
「仲良く遊んでおられました」
「そして共に学問にも武芸にも励まれ」
「すくすくとしたものです」
「そうか、しかしじゃ」
 秀忠は家臣達に述べた。
「後で二人にも話すが」
「お二人にもですか」
「そうされますか」
「うむ、余からもよく話す」
 そうするというのだ。
「そうしたい」
「といいますと」
「今後ですか」
「そのまま仲良くですか」
「その様にせよと」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「そう話す」
「やはり今後のことを考えますと」
「どうしてもですな」
「お二人がいがみ合うことはならぬ」
「そうなのですな」
「そうじゃ、兄弟身内で争ってはな」
 まさにというのだ。
「これ以上無益いや害になることはない」
「だからですな」
「どうしてもそうなりますと」
「幕府が傾くだけ」
「後世にも悪く言われます」
「汚名なぞ受けて何になる」
 まさにというのだ。
「それでじゃ」
「お二方にですか」
「そう言われますか」
「決して殺し合うなと」
「いがみ合うことのない様に」
「そうしておく」
 秀忠の言葉は強いものだった。
「二人共な」
「わかり申した、では」
「お二方をお呼びします」
 秀忠は今から暗雲を感じていた、自身の子達の運命に。その暗雲を感じつつ天下泰平の為の政を行うのだった。


巻ノ百四十八   完


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