巻ノ百四十八 適わなかった夢その十三
[8]前話 [2]次話
「なってしまっては」
「あれはよくない」
「そうですね」
「鎌倉の幕府いや源氏は身内で殺し合った家じゃ」
「それも代々ですね」
「そして誰もいなくなったわ」
秀忠も暗い顔で話した。
「まさにな」
「ああなるからですね」
「兄弟、ひいては徳川の家の者同士で殺し合うことはな」
「なりませんね」
「決してな」
何があってもというのだ。
「だからな」
「このことはですね」
「何としてもじゃ」
こうお江にも言うのだった。
「あってはならん」
「左様ですね」
「だからじゃ」
「竹千代と国松も」
「そうしたいが」
「もし妾が世を去り」
「余も去ってな」
二人がいなくなってからはというと。
「その後」
「どうなるかは」
「わからぬ、それがな」
「心配ですね」
「こうしたことははじめに起こる」
「幕府の」
「その源氏もそうであったし」
頼朝と義経のそれもというのだ。
「そして室町でもな」
「あの幕府も確かに」
「そうであったな」
「はい、そうでした」
足利尊氏と弟直義だ、直義は長い間兄尊氏の片腕であったがやがて袂を分かった。そして一説には直義は尊氏に毒殺されたという。
「二つの幕府もそうで」
「我等もじゃ」
この幕府もというのだ。
「若しやな」
「上様の代でなくとも」
「うむ、子達はな」
「竹千代と国松は」
「わからぬ、二人の仲は悪くないが」
しかしというのだ。
「それでもな」
「こうしたことはで」
「幾ら仲がよくともな」
「政のことであり」
「跡目争いともなれば」
その時はというのだ。
「有り得る」
「先の二つの幕府と同じく」
「鎌倉のあれは論外じゃがな」
頼朝が義経を殺したことはというのだ。
「あれはもう悪い因縁じゃ」
「源氏の」
「あの家は身内で殺し合う家であった」
源為義の家系はというのだ、頼朝と義経の父である義朝はその為義の八人の子のうちの長子であったのだ。
「そしてその結果じゃ」
「一人もいなくなった」
「あれはまさにじゃ」
「悪い因縁で」
「ああなった、あれはな」
「この幕府としては」
「絶対に真似をしてはならん」
そうしたものだというのだ。
「間違ってもな」
「そうですね、あの様になっては」
お江も秀忠に顔を曇らせて応えた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ