409部分:第三十一話 夜の港でその四
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第三十一話 夜の港でその四
「それでもここはです」
「一気に行くの?」
「星華ちゃんのところに」
「そうするの」
「お姉は弱いですから」
だからだと話してだった。
「誰かが傍にいないと駄目なんです」
「誰かがいないとなの」
「傍に」
「それで行くの」
「はい、そして話を聞くんです」
星子は三人に確かな顔と声で話した。
「そうすればいいんです」
「そういえばそうよね」
「星華ちゃんって絶対に一人にならなかったわよね」
「そうよね」
三人もだ。ここで星華のそのことに気付いたのだった。
「だからなの」
「それであえて行って」
「星華ちゃんと話すのね」
「そうするんです」
これが星子の考えだった。
「私、お姉に何かあるとずっとお姉の話を聞いてきましたから」
「それでわかったのね」
「妹さんだからわかるの」
「それで知ってるのね」
「そうです。ですからすぐに行きましょう」
星子の言葉は実にはっきりとしたものだった。そうしてであった。
四人は決めたのだった。全てをだった。
陽太郎と月美は港に向かっていた。電車の外はもう夜になっている。その暗く家々や電柱の灯りだけが見える外を見ながらだった。
ふとだ。陽太郎は言うのだった。
「なあ」
「はい?」
「あれだよな」
「あれとは?」
「いや、この時間ってさ」
陽太郎は外を見続けている。そのうえでの言葉なのだった。
「学校から帰ってさ」
「そうですね。もうそろそろ」
「家に帰ってるんだよん」
「けれどその時間にですね」
「デートってさ」
電車の外から見える灯りはすぐに見えなくなりすぐにまた別の灯りが見える。似たような灯りだがその一つ一つが違っている。
「夜でもいいんだよな」
「夜でもですか」
「朝でも昼でも夜でも」
こう話すのだった。
「何時でもさ」
「そうですね。デートは」
「二人でいればそれだけで」
「デートになるんですね」
「俺今までさ」
陽太郎は気恥ずかしそうな微笑みと共に話す。
「デートって特別なものに思ってたんだ」
「私もです」
「そうだったんだ、月美もだったんだ」
「何かの儀式みたいに特別に」
「そうだよな、何か本当に勝負みたいに」
「けれどそうじゃなかったんですね」
月美は純粋な微笑みだった。そのうえでの言葉だった。
「格式ばってもいなくて」
「厳しいものじゃなくて」
「ただ二人で何処かに行けば」
「それでデートだったんだ」
「本、随分読みました」
今度は月美が気恥ずかしい顔になった。
「デートの本も」
「実は俺も」
「デートの本って一杯ありますよね」
「ネットでも見ればさ」
「雑誌でもですよね」
「もうこれでもかって一杯あるけれどさ」
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