プロローグ
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手を広げてにこやかに笑う大淀の体を、私を痛くない程度の力加減で抱きしめた。
その瞬間に感じる彼女の柔らかさと女性特有の甘い香り。
私の体全体が今、大淀という一人の女性を強く認識した瞬間だった。
提督「温かい……な」
大淀「私もです……」
提督「……痛くはないか?」
大淀「問題ありません。……寧ろもっと」
提督「ん?」
大淀「もっと強く、抱きしめて下さい……」
提督「……心得た」
大淀「んんっ……!」
先ほどよりも力を加えながら大淀の体を抱きしめる。
その際に彼女の口から漏れた甘い声が、私の脳髄を強く刺激していく。
普段の凛とした大淀からは考えられないほど蕩けきった声が、嫌でも私の中の雄の本能を滾らせてくるのだ。
提督「君の髪は綺麗だな。触り心地もいいし、何よりいい匂いだ……」
大淀「提督も……いい匂いです……。月並みですけど、男らしい……力強い、野生的な匂いです……」
提督「それは……褒め言葉と受けとってもいいのかな?」
大淀「勿論です。……お嫌でしたか?」
提督「いや……嬉しいよ」
大淀「あっ……。提……督……っ!」
お互いの髪の感触や匂い差異を楽しみながら、私達はそのまま数分程抱き合った。
私達以外誰もいない、仄かな月明かりが差し込む執務室の中で……。
提督「ふぅっ……この辺りでいいだろう」
大淀「えっ……もう終わりですか?」
暫くして私が大淀の体から手を放すと、彼女はそのわずかに上気した顔に残念そうな表情を浮かべながら口を開く。
提督「いやいや、これ以上は私が色々と我慢できなくなってしまうからな。ここまでが精一杯だ。君とて、これ以上は望むまい?」
大淀「いえ、私はそれ以上のこともウェルカムですが」
提督「……聞かなかったことにしておくよ」
真顔で爆弾発言をしてくる大淀に若干背筋を寒くしながら私は苦笑いを浮かべる。
時刻も既に午前0時に差し掛かっているため、お互いに奇妙なテンションになっているのだろう。
きっとそうに違いない、うん。
提督「おかしなことに付き合わせてしまって済まなかったな。業務も残っていないし、今日のところはここらで解散することにしよう」
大淀「……分かりました。では、お先に失礼いたします」
提督「ああ、明日もよろしく頼むよ」
大淀「はい。……ああ、それと提督?」
提督「ん?」
執務室から外に繋がるドアの前で立ち止まった大淀は、そのままゆっくりと私の方へと振り返った後にこう言った。
大淀「よろしければ……また、私のことを抱きしめて下さいね……?」
提督「……うむ。善処しよう」
大淀「楽しみにしています。それでは、お休みなさい」
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