【寂しさに抱かれて】
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……それから、どれくらい経ったのか。
ネジは、ヒナタが心の内で望むようには抱き返してくれなかった。
ただじっと黙って、啜り泣くヒナタの息遣いを背中で感じていた。
「──?ごめんさい……もう、大丈夫です」
自分で言っておいて何が大丈夫なのか分からなかったが、そう言うしかなかったヒナタはネジの背中からおもむろに離れた。
その時ふとネジが振り向き、ヒナタがハッとして顔を上げると、ネジの右手がヒナタの左頬を撫でるようにそっと触れ、親指で涙の跡をスっ…と拭う。
── 一瞬、時が止まったかのようだった。
暗がりの中でも垣間見える間近の従兄の表情は、哀しみともとれる憂いを帯びている。
(ネジ兄さんも……、寂しいの……?)
しかしその言葉は、口にする事は出来なかった。
ヒナタの心の内を知ってか知らずか、ネジはゆっくりとヒナタの左頬から右手を離し、それ以上何をどうするでもなく再び背を向ける。
「戻りましょう、……ヒナタ様」
──?あの時従兄に触れられた頬がしばらくの間熱を持っているかのうに冷めなかった事を、ヒナタは今でもよく覚えている。
大戦で自分とナルトを命懸けで庇い、死したネジの右手をとって自分の左頬に触れさせてみた時は、酷く冷たく感じたのを今でも忘れはしない。
ヒナタの言い知れぬ寂しさは、ネジを失った事で増したのは言うまでもない。
あの時……抱き返してもらっていたら、自分の言い知れぬ寂しさを払拭出来たのだろうか。従兄が抱き返してくれなかったのは、そうしたところでヒナタ自身の寂しさを拭う事は出来ないと感じていたからだろうか。
互いの寂しさを共有出来なかったのは、やはり従兄の父の死のきっかけを作ってしまった自分自身にあるのかと、ヒナタは思う。
……自問自答を繰り返しても、答えは出なかった。
大戦が終結して数年、ヒナタはあの時従兄のネジと共に見た場所で花火を遠目に見つめていた。
(大丈夫……、大丈夫なわけ……ないのに。本当は)
打ち上げられる花火を目にしながら胸を締め付けられる想いで、涙が頬に伝う。
そして一際大きな花火が、ドンッと音を立て夜空を彩った。
──それでも尚、心の穴は埋まらない。
(やっぱり……寂しいよ、ネジ兄さん)
《終》
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