第五次イゼルローン要塞攻防戦3
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だ」
その呟きは、誰にも聞かれずに消えたが、クライストの心に残すことになった。
+ + +
「敵要塞への攻撃――第二層目まで届いております」
敵防衛設備の損害に対する報告があがり、上機嫌でシトレは後方を振り返った。
アップルトン、リバモア、ビロライネンなど各司令部の主任級の人間もまたほっとしたような面持ちで立っている。
「このまま第三層目まで破壊することができれば、陸上部隊の攻略が可能となるでしょう」
「いまだに敵施設の詳細な図面は手に入っていないからな。どのような罠があるかもしれん」
アップルトンの言葉に、シトレは頷いた。
しかし、それでも攻勢をかけていれば、罠があったとしても打ち破れる。
陸上部隊の突入はそれからでも遅くはないと考えて、どこか浮かない顔をしている人影を見つける。
「どうかしたかね、ヤン少佐」
問いの言葉に、ヤンはモニターから視線を外した。
迷うような様子に、シトレはもう一度問いかけた。
「どうかしたかね」
「は。対空設備の危険は消えたと言え、いまだに敵主砲の範囲に艦隊はおります。早急に陸上戦部隊を突入させるべきかと」
「何を言っている、ワイドボーン。敵主砲は既に並行追撃によって沈黙している」
「撃てないわけではないかと」
「何を馬鹿なことを」
笑えば、ビロライネンがワイドボーンの上司である参謀へと視線を向けた。
だが、言葉にするよりも先にシトレが厳しい表情を向ける。
「撃てないわけではないか」
「僭越ではございますが。突入のタイミングは今を置いてないかと」
シトレの――いや、参謀級の上位士官の視線が一直線へとワイドボーンへと向かう。
だが、ワイドボーンの瞳は二つしかない。
その二つはまっすぐに、シトレを見ていた。
視線を外したのは、シトレだ。
ヤンへと向かい、ヤンは驚いた表情をした。
「ヤン少佐もそう考えているということかね」
「ええ。敵に時間を与えるのは不利になると考えます」
「何を馬鹿な……」
呻くような参謀の言葉を、シトレが腕を伸ばして防いだ。
一直線に伸ばされた分厚い腕に、他の参謀は言葉にすることはできない。
ただ、視線だけがシトレを見ている。
「この時点で陸上部隊を突入させた場合、問題はあるか。アップルトン中将」
「敵要塞内の防御力は未知数です。無理に急ぎ、陸上部隊が壊滅した場合には作戦続行は不可能となります。敵の援軍は期待できず、攻撃を強めてからでも遅くはないかと」
「敵が要塞主砲を撃つ可能性は」
「それを考えますと、小官は何とも」
「恐れながら。そのようなこと、あるわけございません」
アップルトンの言葉にかぶせるように、声高にビロライネンが主張し、そうか――と、シ
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