第五次イゼルローン要塞攻防戦3
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時間を無駄にしたと、シラーは不愉快そうに自席へと腰を下ろす。
敵の攻撃はさらに強くなっている。
予定の時間まで粘っていたら、もしかすれば大きな被害を受けていたかもしれない。そう考えれば、急なこととはいえ後退の命令を早めたのは良かったかもしれない。
防御壁に次々に打ち砕かれる、敵のレーザーを示す緑を見ながら呟いた。
打ち返すこちらの青いレーザーも伸びるが、いかんせん数が少ない。
「反乱軍が、好き勝手にやるものだ」
だが。すぐにそれは逆転するだろう。
敵を射程に引き込み、イゼルローン要塞からの一撃を加える。
崩壊する敵に対して、一気に攻勢をかける。
その時には、敵兵など一隻残らず皆殺しにしてやる。
シラーの顔に嗜虐的な笑みが広がっていく。
「命令はまだか」
「は。ただいま各艦隊と調整中とのこと」
「命令が出たら、すぐに後退する。それまで敵に好きにさせておけ――駆逐艦や巡航艦を前にだして、防げ」
本来ならば敵を防ぐためには、盾となるべき大型艦を前にするべきだ。つまるところ平民の多くを壁とする命令であった。
だが、副官は反発することもできず、命令を下した。
破壊の色が大きくなる。
前線に出され、炎をあげて、塵と消えていく。
だが、シラーにとっては被害よりも、戦艦に向かうレーザーの数が少なくなったことを満足げに頷いた。平民がいくら死んだところで、シラーが不愉快になるわけではない。破壊される艦の様子を絶望的な視線をもって見る平民の兵たちの姿が目に入るわけがない。
「艦隊司令から入電。後退を開始する」
「よし。全速で後退しろ!」
通信士官が命令文を読み上げると同時、シラーは立ち上がり、叫ぶ。
即座に防御壁に使用していたエネルギーが切り替わり、動力機関へ変換される。
必然的に防御壁は弱くなり、敵の攻撃がやすやすと防御壁を貫き、艦を破壊する。
だが、それは最前列に置かれていた駆逐艦や巡航艦が真っ先に標的となり、戦艦レオポルドβには到達しなかった。
機関が強く動き出し、唸りに近い振動が環境に広がった。
微かな運動力が艦橋を揺らして、敵艦隊との距離が動き出す。
同時、周囲の艦隊も後退を開始する。
多少の被害はあったが、大きな被害はない。
上手くいったと、シラーは笑みを浮かべた。
「敵艦隊との距離――広がりません」
「なに!」
何を馬鹿なことと、報告した索敵士官へと強い視線を送る。
「敵艦隊接近――!」
叫ぶように索敵士官が、悲鳴のような声をあげる。
「そんなことがあるわけがない。しっかりと見ろ!」
「見ています、敵艦隊との距離、接近――あ」
絶望的な声をあげて、索敵士官は手元の端末から正面を見上げた。
呆然と、誰もが前
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