398部分:第三十話 光と影その三
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第三十話 光と影その三
「私達もね」
「夜の港か?」
「違うわよ。それじゃあ二番煎じじゃない」
「じゃあ何処だっていうんだよ」
「夜のビアホールなんてどう?」
これが津島の提案だった。
「どうせだったら。二人でね」
「おい、ビアホールってな」
狭山は津島のその言葉にすぐに突っ込みを入れた。本当にすぐにであった。
「それは駄目だろ」
「八条町は高校生でもお酒歯いいじゃない」
ほぼ黙認である。
「だから。どうなのよ」
「今秋だぞ」
狭山は季節から話した。
「秋だぞ。それでビアホールなんてな」
「ないか」
「そうだよ、ねえよ」
口を尖らせて津島にこのことを告げたのだった。
「ある訳ねえだろ」
「もう終わってるのね」
「他の場所になるだと」
「じゃあ」
それを受けてだった。津島は少し考える顔になった後でだ。こう言うのであった。
「それじゃあカラオケ行こう」
「夜のカラオケかよ」
「そう、スタープラチナ」
店の名前まで言うのであった。
「そこに行こう。どうかしら」
「あそこはなあ」
しかしであった。狭山はスタープラチナと聞いて浮かない顔を見せる。そのうえでこう言うのだった。アンパンを牛乳で流し込んでからだった。
「あそこのお店の娘横浜ファンだろ」
「何時も試合経過とかグッズとか置いてるわよね」
「試合負けたら荒れるからな、あの娘」
「けれどもうシーズンオフじゃない」
「オフでも阪神ファンが行ったらまずいんじゃないのか?」
「ああ、それは大丈夫だから」
津島はその左手を手刀の形にして左右にべらべらと振って述べた。
「阪神はいいのよ、あそこの娘さんは」
「そうなのかよ」
「巨人じゃないとね」
「いいのかよ」
「阪神には比較的寛大な人だから」
こうした人物は多い。どの球団も巨人以外には寛容であるのだ。そしてそれは人として非常に正しいことでもあるのだ。
「だから大丈夫よ」
「そうか。じゃあな」
「じゃあ夜のカラオケね」
「そんなの誰でもやってねえか?」
「気にしない気にしない」
また左手を振ってだった。
「そんなことはね」
「随分といい加減な話だな」
「いい加減でいいじゃない」
今度はこう返す津島だった。
「こういうことは余裕がある方がいいのよ」
「そういうものか?」
「私はそう思うけれどね」
「まあそれもそうか」
狭山も少し考えたうえで津島のその言葉に頷いた。
「余裕があるのがいいか」
「そういうこと。それでね」
「ああ、それで?」
「どうするの、それで」
「カラオケでいいかどうかか」
「それでどうするの?」
また狭山に問う津島だった。
「別の場所にする?それならまた探すけれど」
「いや、そこでいいさ」
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