第6話 狂うという選択肢
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────そして。
机に並べられた札を、覗き見て────ミスに気づかされた。
並べられたトランプの札は、完全オーダーメイドの同じ数字が一つも無いトランプ────つまり先攻が必敗のゲームだった。
フィールは咄嗟に不正告発しようとして────だが、ある事に気付きそれを止めた。
ここで不正告発してしまえば────札を覗き見たこちらの不正行為が露呈する。
上辺だけ見ればただのトランプ、ならば告発は出来ない。フィールは、そう歯噛みした。
ならば、「14」以上の数が記された札をめくって告発すればいい。
プラムは、そう笑った。
全く────こんな子供騙し、思いつき以下の愚の骨頂だ。
────とでも、賢いお二人様は思っただろうか。シグは、2人の思考を読み切って嗤った。
────最初シグは、「ルールに追加変更を加える」と言った。
だが────説明したルールに対し、シグは「こう変更する」としか言っていない。
追加するルールを伏せていることは────自明。
そう、その追加ルールこそ。
・トランプは一枚も同じ数字がない特殊な物を使う
その文言だった。
以前、空がステフとのゲームでハトを作為的に飛ばしたように、ルールに抜け穴をつくる事の一切は禁じられていない。
また、東部連合がゲーム内容を伏せるように、ルールそのものを説明する義務さえない。
つまり────
────このゲームに、何一つとして不正はなかったのだ。
「残念だったな。“必勝のゲーム”なんざ、幾らでもあるんだよ。ルールの重要性、それをお前らはわかってたつもりでその実何もわかっちゃいなかったってだけの話だ」
一切の光が消えた目で、シグは無慈悲に言った。その顔におよそ表情と呼べる物は存在しない────もはや、狂い切って壊れたかのような歪な姿に、プラムも、フィールも何も言えなかった。
「お前らの全権を貰う。恨むなら、自分をポンコツに作った親でも恨んでろ」
シグは────幽鬼のごとき虚ろな目で、たった一言、そう告げた。
さあ、舞台は整った。手札二枚、切り札一枚。
『 』を潰すカードは揃った。仕込みは完了した。
さあ、再戦を始めよう。
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