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空に星が輝く様に
395部分:第二十九話 壊れてしまったものその十四

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第二十九話 壊れてしまったものその十四

「けれどつきぴーと斉宮は」
「陽太郎君は」
「太陽」 
 それだというのであった。
「陽太郎だから」
「そうよね。けれどお日様とお月様は」
「夜と昼だから」
「一緒になれないんじゃ」
「けれどなれる」
「なれるの?」
 月美は椎名の今の言葉には怪訝な顔になった。そのうえで彼女に問い返す。
「お日様とお月様が」
「お空を見るとわかる」
 こう返す椎名だった。
「お昼にお日様があっても一緒にお月様もあったりするから」
「あっ、そうね」
「夜も同じ。見えないだけ」
「それでも一緒にいるのね」
「人の目には見えないだけ。わかりにくいだけで」
「一緒にいるから」
「だからそれはいい」
「いいのね」
「そう、いい」
 また月美に言う。
「そういうものだから」
「それでなのね」
「一緒になれるから」
 月美と陽太郎がというのであった。
「それに二人だけじゃないから」
「愛ちゃんがいてくれるのね」
「愛だから」
 椎名はここでは自分の名前のことを話すのだった。
「愛がいるから」
「そうよね。愛がね」
「愛が味方していて成就しない愛なんてないから」
「うふふ、そうよね。愛の女神様ね」
「女神かどうかはわからないけれど私の名前がそれだから」
 その愛という言葉をあえて強調して話すのであった。月美を励ましさらに向かわせる為にだ。陽太郎とのその愛にである。
「安心して」
「うん、そうさせてもらうわ」
「じゃあ。これからどうする?」
「もう少し見たいけれど」
 月美は椎名に顔を向けて微笑んでこう話した。
「いいかしら」
「夜空をね」
「夜空だけじゃなくて他のもね」
「港や海も?」
「ええ、そういったのも」
 全てをだというのであった。
「見たいけれど」
「それはいいことね」
「いいのね」
「私も。そう思うから」
「そう、愛ちゃんも」
「言い訳は後で考える」
 椎名は微かに笑って述べた。
「そう、後で」
「お父さんやお母さんへの言い訳は」
「これが中学生だったら駄目だけれど」
「そうよね、中学生だったらね」
「けれど中学生と高校生は違う」
 このことが大事なのだった。
「だから何とでもなる」
「あまり遅れ過ぎてもあれだけれどね」
「そこは匙加減」
「そういうことね」
「そう、じゃあ見よう」
「ええ。それじゃあ」
「二人でね」
 今は幸せな二人だった。月美は椎名と夜の港の全てを見ながらその先のことを考えていた。他ならぬ陽太郎とのデートのことをだ。
 時間は静かに、だが確実に進んでいた。二人の仲もまた。


第二十九話   完


                 2010・11・19

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