第六十五話 志摩の海賊その八
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「この世界を救う為にな、だからだ」
「我にしてもだな」
「若し仲間にならないと言っていたら」
その時はというのだ。
「意地でもだ」
「仲間になってもらっていたか」
「どの様な手段を用いてもな」
「鳴かぬならか」
幸正もこの言葉を出した、この言葉を。
「そうしていたか」
「殺してしまえとか」
「鳴くまで待とうと思っていた」
「鳴かせてみせるだ」
英雄はこの考えを幸正にも話した、返答として。
「そうしていたか」
「鳴かせてみせようか」
「そうだ、殺して何になる」
「それではな」
「それで終わりだ、ましてや俺達はどうしても必要だ」
幸正に限らず外の世界から来て力を持つ者がというのだ。
「あんたの銛もか」
「これか」
籠の傍にあった、黒鉄色の見事な銛だ。
「海彦だ」
「あの神の銛か」
「そうだ、その銛だ」
「その銛もかなりの力を持っているな」
「船さえ一撃だ、そしてだ」
「さらにか」
「水を操れることも出来る」
そうした力もあるというのだ。
「自由にな」
「そこまでの力があるか」
「この銛があればな」
まさにとだ、幸正は一行に話した。
「思う存分戦える、水では特にな」
「ではその銛の力もだ」
「この島、そして世界の為にだな」
「使わせてもらう」
幸正はこのことを約束した、そうしてだった。
彼は今度は籠の中の鯉を見て言った。
「この鯉は放す」
「食べないっちゃ」
「食いものは別のものを考えていた」
だからだとだ、幸正は愛実に答えた。
「既にな」
「鯉は食べないっちゃ」
「鯉も嫌いじゃないが今は遊びで釣っていた」
「だからっちゃ」
「そうした時は食わずに放す」
釣ったならというのだ。
「拓を取った後でな」
「魚拓を取る趣味もあるっちゃ」
「お笑い以外にな」
そちらの鑑賞とは別にというのだ。
「そちらの趣味もある」
「そうっちゃ、ではっちゃな」
「今から魚拓を取る、そしてだ」
その後でとだ、幸正はさらに話した。
「その別のものを食いに行くか」
「それは何や」
今度は耕平が幸正に尋ねた。
「一体」
「牡蠣だ」
「牡蠣かいな」
「この世界の志摩も海の幸が豊富だが」
幸正はさらに話した。
「特に牡蠣がよく採れてな」
「その牡蠣をやな」
「今から食いに行く」
「それでここの牡蠣は美味いんか」
「何なら一緒に来るか」
その牡蠣を食べにとだ、幸正は耕平だけでなく他の仲間達にも言った。口調は相変わらず淡々としている。
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