肩揉みそうゆな
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現在、奏輝と幸奈は異世界にある宿屋の一室で休憩をしていた。何故異性の二人が同室なのか、というと部屋が二人部屋二つで男三人に女一人の組み合わせで奏輝と幸奈が恋人同士だからという説明で十分だろう。
「休むと言っても、特にする事無いですね……」
「そうね。買い物って気分でも無いから……」
奏輝は二人分の珈琲を入れながら何かしたいと考える。こういう、好きな人と二人で居られる時間は限られているらしいから奏輝としては思い出を作りたいところなのだが。
──思えば幸奈さんの方から誘って貰う機会が圧倒的に多いですね、後は幽人が気を利かせてくれたり……
うーん……と考えながらグラスに注いだ珈琲に特製ミルクと砂糖を多めに入れて混ぜる。
奏輝も幸奈も珈琲については基本的にブラックでも微糖でも何でも飲めるのだが、二人ともミルクコーヒー並に甘くしたモノが一番の好みだ。以前たまたま奏輝がいつもの調子で珈琲を淹れたら丁度幸奈もその味が好きだったようで、以来珈琲は奏輝が淹れるようになっている。
トレーにグラスを乗せて、奏輝は幸奈のいる方に運んでいく。
「うーん……」
すると幸奈は首を曲げ、左肩を小さな手で少し辛そうな声を出して揉んでいた。
「肩凝りですか?」
「ええ……最近特に酷くて……此方には機械も無いから自分でするしか無くて……」
奏輝はトレーを置いて、幸奈の悩みを聞く。彼自身、肩凝りという事に悩まされた時は無いが、それが辛いモノだということは知っている。
「よかったら、俺が肩揉みしましょうか?」
「え? 奏輝君が?」
「家族の肩をほぼ毎日揉まされていたのである程度は上手いと思いますよ。少なくとも自分でやるよりは効果があるかと」
その提案に幸奈は申し訳なさそうに、しかし嬉しそうな顔で「それじゃあお願いしてもいいかしら?」と言ってそれを受けた。
幸奈は椅子に座り、奏輝はその後ろに立っている。目線を下げれば見慣れた艶やかな黒いポニーテールに雪のように白く、細い首筋が奏輝を魅了した。
「奏輝君? どうしたの?」
「……いえ、な、なんでもないです。」
何らかの異常を察したのか、幸奈は振り返って奏輝の方を見ると、少し顔を赤くした奏輝がその顔を逸らしていた。
「……奏輝君、嘘が下手すぎるわ。きちんと言って頂戴」
「えーと……その……」
奏輝は首をポリポリと掻きながら、幸奈を凝視しないようにして口を開く。
「幸奈さんの、その……ポニーテールとうなじがとても綺麗で、それに見惚れてて……あと見返った時も美しくて……あと──」
「も、もういいから! でも、ありがとう。奏輝君に言われると、お世辞でも嬉しいわ」
その褒め言葉に幸奈は顔を真っ赤にしてそれ以上言わないようにさせる。そ
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