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空に星が輝く様に
391部分:第二十九話 壊れてしまったものその十

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第二十九話 壊れてしまったものその十

「うん、それでね」
「それでなのね」
「そう。絶対に時間を作るべき」
「そうして何処に行くの?」
「ワンステップ行ける場所」
 そこだというのである。そこにだと話すのだった。
「そこに」
「そこになの」
「そう、そこに行くといいから」
「それで何処?そこって」
「夜景が見える場所」
 ここではまだ具体的な言葉ではなかった。いささか抽象的な言葉だった。
 そしてだった。それをさらに話すのだった。
「そこに行くといいから」
「夜景なの」
「夜の海」
 今度はさらに踏み込んで具体的な場所を話した。
「港に行くといい」
「夜の港なの」
「神戸はそうしたいい場所が沢山あるから」
 港町の特権であるが神戸は特にであった。伊達に太平洋有数の港を持っているわけではない。そうした夜景には恵まれているのである。
「そこに行くといい」
「時間を作ってなの」
「そういうこと。お家に帰る理由が遅くなっても」
「その時は?」
「理由は幾らでも作られる」 
 それも大丈夫だというのである。とにかく勧める椎名だった。
「だからここはアタックあるべし」
「あるべしなのね」
「そう、あるべし」
 椎名はまた言った。
「そしてワンステップあがる」
「そういうこと。それじゃあ」
「うん。それじゃあ」
「夜の港町」
 またそこだと話す。
「二人で一緒に行くといいから」
「夜の港町って」
「一人で行くより二人で行くといいから」
「そんなにいいのね」
「行かないと怒る」
 今度は発破をかける。椎名の話術であった。
「いいわね」
「うん、それじゃあ」
「あとは」
「あとは?」
「今日のことだけれど」
 今度は自分と月美のことを話す。そうするのだった。
「何処に行くの?」
「何処にって?」
「そう、私達は」
「ううんと、それじゃあだけれど」
「何処でもいいけれど二人で楽しい場所にしよう」
「それだったら」
 椎名にそう言われてだ。月美はこう話してきたのだった。
「いい場所があるけれど」
「いい場所?」
「その港町。行かない?」
 月美はここでにこりと笑った。そのうえでの椎名への言葉だった。
「今日にね。早速」
「私となの」
「陽太郎君とも見たいけれど」
「私とも」
「陽太郎君はかけがえのない相手よ」
 それは否定できなかった。それも絶対にであった。
「けれどね。愛ちゃんもね」
「私も」
「そう。一番の親友でしょ」
「だからなの」
「陽太郎は。恋人としてかけがえのない相手で」
「私は親友として」
「かけがえのない相手だから」
 だからだというのである。月美は静かに話すのだった。その椎名の顔を見ながらだ。

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