巻ノ百四十八 適わなかった夢その十一
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「その様に言われておる」
「文で」
「そうじゃ、それでな」
「上様としては」
「出来れば戦いたいと思うが」
「大御所様はですか」
「大御所様と真田殿の戦と言っておられる」
ここでも文のことを話す秀忠だった。
「それでな」
「ここはですか」
「うむ、余は戦わぬ」
こう言うのだった。
「この江戸で政をしておく」
「このまま」
「余には泰平の政そして王道を歩めと言っておられる」
「王道ですか」
「そうじゃ、幕府は王道を歩めと言っておられるのじゃ」
「政の、天下の王道をですか」
「謀ではなく民と向かい合ってそうしてな」
そのうえでというのだ。
「民そして天下の為の政をせよとな」
「言われていますか」
「この戦に関わることはならぬとも言われておる」
将軍である秀忠ですらというのだ。
「その様にな」
「それでは」
「その様にする、ではな」
「明日からまたですか」
「天下の政をする」
戦ではなくというのだ。
「それをする、駿府で何が起ころうともな」
「何もないということで」
「ことをしていくぞ」
「わかりました、では今宵は」
「明日の朝からまた政じゃが今はな」
「はい、酒をですね」
「飲みたいがよいか」
お江に微笑んで言った。
「今宵はな」
「では。ただ上様はいつもですね」
「酒は飲んでもじゃな」
「あまり飲まれませんね」
「うむ、慎んでおる」
意識してあまり飲まない様にしているというんどあ。
「その様にな」
「そして酒に溺れることなく」
「政に励むつもりじゃ」
「そうですか」
「その様にな」
まさにというのだ。
「天下人たる者乱れてはならん」
「そして酒等に溺れることも」
「贅沢はせぬ」
こう考えているからだというのだ。
「他のこともな」
「贅沢の類はですね」
「公が贅沢に覚えてはな」
「民に示しがつきませぬか」
「それに民から税を搾り取って己が贅沢をするなぞ」
そうしたことはというのだ。
「到底な」
「贅沢はですね」
「最も卑しむべきことの一つじゃ」
「だからですか」
「余はせぬし余の後もな」
「代々の公方様は」
「してはならぬな、異朝にはそうした皇帝の話が多い」
ここでこうした話もした秀忠だった。
「あちらの帝ではな」
「贅沢に溺れる方も多いですか」
「さっき出した酒池肉林という言葉も異朝の言葉じゃ」
あちらのというのだ。
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