巻ノ百四十八 適わなかった夢その八
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「そしてそのうえで勝つつもりです」
「そうですか」
「必ず」
「だから共に来て下さったのですな」
「左様です」
「わしはあれかのう」
最後に後藤が笑って幸村に話した。
「友としてか」
「それがしと」
「そうじゃ、わしは貴殿とは何か」
「はい、そう言われますと」
「友になるのう」
「左様でありますな」
「友の為に戦うのも武士じゃ」
そう思うからこそというのだ。
「だからな」
「戦いそして」
「うむ」
そのうえでというのだ。
「真田殿を助けたくなってな」
「来て下さいましたか」
「そうなるであろうな、はっきりとは言えぬが」
「そうでしたか」
「何、そうした戦も面白い」
笑って言う後藤だった。
「友の為に戦うのもな。ではな」
「駿府においては」
「わしもじゃ」
「思う存分ですな」
「戦い勝とう」
「それでは」
「我等は当然です」
十勇士達も言ってきた。
「殿と常に共にいますから」
「家臣として義兄弟として友として」
「共にそう誓い合いましたから」
「殿が駿府に行かれるなら我等も」
「最初からそう決めておりました」
「ですからこの度も」
「そうした考えで」
「駿府でも戦いまする」
まさにというのだ。
「これからも共におりますし」
「もうこの考えは変わりませぬ」
「そうであるな、お主達はな」
幸村は十勇士達にも笑顔で応えた。
「これまでずっと拙者と共にいてくれておるな」
「無論です」
「生きる時も死ぬ時も同じではありませぬか」
「そう誓ったではありませぬか」
「死ぬ場所も」
「ですから」
それならばというのだ。
「我々は薩摩に戻っても同じです」
「殿と一緒にいます」
「十一人で誓った時と同じく」
「そうしていきます」
「殿、この戦いでもですぞ」
猿飛が笑って言ってきた。
「我等は一人も死にませんぞ」
「左様、勝って薩摩に帰るのみ」
清海も笑っている。
「それ以外のことは有り得ませぬ」
「十二神将何するものぞです」
伊佐は兄に続いて幸村に話した。
「例えどれだけ強くとも」
「強い敵と戦うことこそ喜びではありませぬか」
霧隠は十勇士達が持っているこの考えを述べた。
「ではこの度も同じでありますぞ」
「戦いそして勝つのみ」
穴山も言うのだった。
「そして帰るだけですぞ」
「至って簡単ではありませぬか」
望月も明るく笑っている。
「殿が言われるまでもありませぬ」
「生きるも死ぬも同じならそうするだけ」
根津の声は静かであるがそれ以上に確かなものだった。
「言葉をそのままにするまでです」
「薩摩に帰った後はその時考えればいいだけのこと」
由利は完全に割りきっている。
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