巻ノ百四十八 適わなかった夢その七
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「そうしていました」
「そうであったか」
「はい」
まさにという返事だった。
「左様でした、そして」
「天下を知っていた」
「そうであったか」
「はい、常に天下の動きを見て」
大助は二人にさらに話した。
「書も読み修行も行い」
「戦に備えていた」
「そうであったか」
「それがしもまた」
大助自身もというのだ。
「そうでした、先の戦では敗れましたが」
「その鍛錬も学問も生かし」
「今度こそか」
「勝ちます」
「左様、駿府では勝ちましょうぞ」
幸村は微笑み長曾我部と明石に話した。
「いよいよ駿河に入りますが」
「わかり申した、しかし思えば」
長曾我部が幸村に答えて言った。
「まさか大坂の戦からまた戦をするとは」
「思いませんでしたか」
「全く」
まさにというのだ。
「あの時敗れ逃れましたが」
「それでもですな」
「再起は考えておりました」
また戦えれば戦うつもりだった、だからこそ長曾我部はあの時大坂から逃れたのである。忠義の者達と共に。
「しかしまさかです」
「この様にですか」
「また戦う時が来るとは。ですが」
「土佐のことはですか」
「もう諦めたでござる」
長曾我部は笑って幸村に話した。
「最早」
「そうでしたか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「今の戦は土佐を目指す戦ではなく」
「別の為の戦ですか」
「意地ですな」
武士のそれだとだ、こう答えたのだった。
「それで戦っておりまする」
「土佐の主に返り咲くのではなく」
「はい」
まさにというのだ。
「その為に。あれだけ土佐一国にこだわっていましたが」
「その想いも」
「もう諦めました」
笑って言うのだった。
「薩摩に逃れて思いました、もうです」
「土佐の夢は捨てて」
「これからどうなるかわかりませぬが今は」
「武士の意地で」
「戦いまする、何こうした戦もよいですな」
笑ってこうも言った長曾我部だった。
「最後の最後には」
「意地の為に戦うそれも」
「大坂で敗れた時どうも意地を通しきれていないとも思っていましたし」
「だからこそ」
「はい、それがしは戦いまする」
「駿府でも」
「真田殿と共に」
「それがしはまだ諦めていませぬ」
今度は明石が話してきた。
「切支丹を天下に広めることを」
「そのことはでござるな」
「はい、ですが今は」
「明石殿もでござるか」
「武士の意地として。大坂では長曾我部殿と同じで」
「意地を通しきれなかった」
「その意地の分だけ戦います」
こう言うのだった。
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