389部分:第二十九話 壊れてしまったものその八
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第二十九話 壊れてしまったものその八
「そんなこと考えなくてもいいのにな」
「後で馬鹿馬鹿しいってなるのにね」
「まあ今はそっとしておいてやるか」
「それがいいわね」
親として妥当な言葉であり対応だった。だが二人は真実を知らなかったしわかっていなかった。それこそが問題であったのだが。
「それじゃあな」
「今はね」
「それがいいかな」
星子は首を傾げさせながら言った。
「今は」
「気遣いもしっかりしなさい」
母はここで次娘に話した。
「あんたはそれができてるからね」
「それはわかってるつもりだけれど」
「つもりだけれど?」
「今のお姉ってそうなのかな」
ここでまた首を傾げさせる彼女だった。
「本当に。喧嘩してなのかしら」
「違うのか」
「そんな気がするけれど」
こう父にも話す。
「違うかな、やっぱり」
「どうだろうな。ただ」
「ただ?」
「あいつが早く元気になればいいな」
「そうよね」
母も父の言葉に頷く。二人共その顔は心配そうなものだ。
「早くね」
「ああ。見守るか」
「そうしましょう。今はね」
「それで何とかなればいいけれど」
また言う星子だった。彼女は姉が本当に心配だった。そしてそれからだ。
星華は部屋から出なくなった。それが三日続く。食べ物は部屋の扉の前に置くだけだった。置くのは星子が自分から志願した。
それで置く。この朝もだった。
「ねえお姉」
「・・・・・・・・・」
返事はない。気配も弱い。
「御飯ここに置いておくからね」
「・・・・・・・・・」
「晩御飯は。これね」
その横に置かれていた。しかしだった。
殆ど手をつけてはいなかった。全くと言ってよかった。
それを見て心配になる。だが今はだった。
彼女にもどうすることもできなかった。とてもであった。
「私学校に行くから」
こう言って扉の前を去る。後ろ髪を引かれる思いだったが今はどうすることもできなかったのだ。ただ扉の前に来ることだけしかできなかった。
そしてだ。学校ではだ。三人は星華がいないことに明らかに戸惑っていた。
それでだ。クラスの端で口々に話すのだった。
「ねえ」
「ええ」
「どうしてなのよ」
怪訝な顔で話をする彼女達だった。
「星華ちゃん来ないのよ」
「病気じゃないわよね」
「違うわよね、やっぱり」
何となくだ。それはわかっていた。
そしてだ。州脇が言うのだった。
「多分ね」
「あれよね。斉宮とのことで」
「それしかないわよね」
「うん、そう思うわ」
州脇は怪訝な顔で橋口と野上に述べた。
「やっぱり。あれしかね」
「ショックだったのね」
「つまりは」
「どうしようかしら」
そしてだ。また言う州脇だった。
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