第五次イゼルローン要塞攻防戦2
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張が吐息となって漏れた。
「なんだ、緊張しているのか、ヤン少佐」
そこにかかったのは、随分と明るさの混じる声だった。
周囲の参謀たちとは違い、不安さを一切感じさせない声音と表情。
力強い瞳が、ヤンを見ていた。
「そりゃあね。これは大役だ、ワイドボーン少佐」
「いま考えたところでどうにかなるわけでもない。なるようになる。そのための作戦だ」
そうだろと問いかける自信を持った口調に、ヤンはそうだねと同意した。
見事なものだなと、ヤンは小さく笑う。
シトレには劣るかもしれないが、少なくとも自分にはない貫禄というものだった。
仕方がないと髪をかきながら、それでもエルファシルの状況に比べれば随分とましだ。
自分は一人ではないと思えるから。
最もそんな感情は彼の性格から、言葉にだすことはなく、表情に出すだけに終わった。
満足そうに頷けば、ワイドボーンは離れていった。
彼は彼で任務があるのだろう。
むしろ並行追撃作戦が成功してからが、彼の出番だ。
「なるようになるか――彼らしい言葉だな」
ゆっくりとベレー帽をかぶりなおして、ヤンは前方へと視線を戻した。
モニターが敵軍の様子を映していた。
艦の正面を映しているモニターとは別に、全体像を映すモニターがある。
そこに、動きができた。
視界に捉えた動きに、全員が息を飲んだ。
小さく誰かが、きたと呟いた。
「敵艦隊、後退を開始します」
同時、叫ぶような報告が索敵士官からあがった。
「全艦隊に伝達。これより、作戦コードA−1――『巨狼の鎖』を実行する」
艦橋に、シドニー・シトレの声が響き渡った。
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