第五次イゼルローン要塞攻防戦2
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たちは、この作戦の最大の山場を前にして、表情に緊張の色が浮かんでいる。並行追撃と簡単には聞こえる作戦であるが、過去四回の戦いで選択しなかったのには理由があった。
失敗した場合のデメリットの大きさと、成功する可能性の問題だ。
仮にこれが過去の平地で戦っていた時代であったならば、退却する敵を追随して砦からの攻撃の盾とすることは簡単だったろう。実際にそういった戦いは過去には枚挙にいとまがない。
だが、それは互いが徒歩で――あるいはせいぜい騎馬であったからだ。
撤退する艦隊との距離を一気に詰めようとすれば、同時にこちらも動く必要がある。
遅すぎれば、要塞主砲の狙い撃ちであるし、早すぎれば敵艦隊への突貫だ。
防御行動を解いて、突っ込んでくる艦隊は実に狙いやすい事だろう。
どちらにしても、一つ間違えれば戦争どころの話ではない被害を受けるのだ。
それを防ぐため、同盟軍の中でも練度の高い精鋭部隊を三個艦隊揃え、参謀の数を増やし調整し、訓練を重ねた。
成功するために万全を期した。
それでも周囲に伝わる緊張と不安さは隠しておくことができない。
ただ一人。
中央に立つシトレだけは違った。
わずかな緊張の揺らぎすら見せず、不敵な様子で直立不動。
腕を組んだままに、立つ姿は、まさしく総司令官たるに相応しい姿だと言えた。
さすがだな。
普段を知っていれば、目を疑うような――だが、そこに確かに存在する将器の器。
一般の兵卒から、士官に至るまで人気の厚い理由を改めて実感する。
とはいえ、そればかりに目を奪われているわけにもいかない。
ヤンが担当するのは、この作戦の肝となる並行追撃へのタイミングだ。
全ての艦隊には事前にデータとして行動を送信しており、合図があると同時に一斉に行動ができる手はずとなっているが、それでも微調整は必要である。端末を叩きながら、修正をかける。
それに、ヤンが緊張を感じているのはそれだけではない。
アッテンボローが生意気な後輩と評価し、しかし、どこか憎めない男。
そんな彼から渡された爆弾ともいえる作戦――それがヤンの右手にあった。
手のひらに収まるほどの、小さな二つのメモリチップ。
それを見れば、気が重くなる。
それが実現してほしくないという希望――そして、実現した場合に委ねられた重さ。
端末前で足を組む、決して褒められない姿勢をとりながら、ヤンはそれを眺めた。
アレス・マクワイルドとの接点は、過去にシミュレート大会で顔を会わせたくらいであり、彼が参謀として配属されるまでほとんど会話をしたことがなかった。そんな人物に託すにはあまりにも重く、正直なところ買いぶり過ぎだと愚痴も言いたくなるが、それを口にはできない。
ただ、わずかな緊
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