第五次イゼルローン要塞攻防戦2
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あった。睨むようにモニターを見るが、ヴァルテンベルクが睨んだところで戦況が変わることはなく、ただ被害の数だけが大きくなっている。
不機嫌そうな顔をしたままで、ヴァルテンベルクは背後を振り返った。
そこには立派な髭を蓄えた、中年の男が立っている。
ヴァルテンベルクの傍には近寄らず、しかし、呼ぶほどに遠いわけではない。
髭によって威厳を保っているが、眼光に欠けるが弱さが苛立ちを募らせる。
このまま無視をしようかと考えて、ふとヴァルテンベルクは口にした。
「レンネンカンプ大佐」
「はっ」
力強く返事をして、一歩前に出る。
ヴァルテンベルクはそれを手で制しながら、顎に手をかけ、髭を撫でた。
「そう言えば、貴官のところに配属された、あの金髪の小僧はどこで震えている」
馬鹿にしたような言葉に、周囲から笑いの声があがった。
その様子に、ヴァルテンベルクも笑みを浮かべた。
「心配ならば、様子を見に行ってもいいのだぞ」
「かまいません。部下一人だけを贔屓するわけにもいきませんから」
実直に答える様子に、ヴァルテンベルクは苦笑をした。
つまらない男だと。
「ミューゼル少佐であれば、あちらにいるかと」
そう指さしたのは、最前線の一部だ。
砲撃を最も受けており、被害が拡大していると報告のあった一角。
「はっ?」
ヴァルテンベルクも、そして周囲の人間たちも笑いを止めた。
同時に振り向くのは、レンネンカンプのさした前線だ。
その視線の先で、赤い爆発が起こった。
「れ、レンネンカンプ大佐……貴様は――あれを最前線に送ったのか」
「本人が希望するのであれば、小官に断る理由などございません」
「そういうことじゃない。奴が誰かを知っているだろう!」
「まだ若いが、立派な少佐です」
ヴァルテンベルクは殺しかねない視線を、レンネンカンプに送った。
まずいと、唇をかみしめる。
馬鹿にする程度であればいい。
だが、下手に金髪の小僧を殺したとなれば、皇帝陛下の御不興を買う可能性がある。
少なくとも、その寵姫はヴァルテンベルクを憎むだろう。
実直で公平と話は聞いていたが、ただ融通の利かぬだけではないかと、心中で怒声を向けるが、ヴァルテンベルクは叫んだ。
「全艦隊、後退だ」
「はっ、後退ですか?」
「何を聞いている。後退だ、今すぐ敵をイゼルローン要塞に誘い込め!」
焦りを隠すことなく、ヴァルテンベルクは叫んだ。
+ + +
第八艦隊旗艦 ヘクトル。
戦況は、予定通りに推移していた。
艦隊総司令官のシドニー・シトレを中央にして、左右に参謀たちが立ち並ぶ。
その最前列でヤン・ウェンリーは前方を見ていた。
シトレの周囲に立つ参謀
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