第五次イゼルローン要塞攻防戦2
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意図を理解して、アレスはスレイヤーの元へと近づいていった。
アレスの動きに、視線が向かう。
スレイヤーに近づいて、放たれたのは問いだ。
「ここまでは予定通りだ。総旗艦からは何か連絡は」
「いいえ。問題はございません」
「それは重畳」
スレイヤーは満足そうに頷けば、アレスに向いた視線も元に戻った。
スレイヤーも前を向き、アレスもそれに倣った。
モニターでは黒と赤が混ざり、それにレーザーの光が流れている。
「ここまでは予想通りだ。だが、君の嫌な予想はあたらないことを希望したいものだ」
独り言のように、スレイヤーは小さく呟いた。
アレスが視線を向ければ、スレイヤーは前方を睨んだまま。
「全艦隊、敵に対して圧力を強めよ」
艦橋に力強い言葉が響いた。
+ + +
「前線より、敵の圧力が強く後退の許可を求めています」
「後退ではない。誘い込むのだ――栄えある帝国軍に後退の文字はない」
通信士官を叱咤し、苛立たし気にヴァルテンベルクは机上を叩きつけた。
前方のモニターでは、同盟軍に圧迫されるように帝国軍が映っていた。
数の違いは圧倒的な力となり、帝国軍を押している。
こちらが一発の間に三発のレーザーが返ってくる。
既に敵の前線はミサイルの射程内に入っている。
火力は多くなり、当初は被害を報告していた士官も、今では戦艦など重要なものを除いて、パーセント単位での報告となっていた。
確かに兵では劣勢。
だが、握った拳とともに、声が震える。
白い肌が赤みを増していった。
「反乱軍風情に何を腑抜けたことを。まだ戦いは始まったばかりではないか。前線の腐向けに伝えろ、誘い込みは予定通りだ。それまで反乱軍に対して反撃を加えろ」
「情けない限りでありますな。烏合の衆相手に何を慌てているのか」
「その通りです」
ヴァルテンベルクの周囲では、同調するような言葉があがる。
だが、それを聞いてもヴァルテンベルクの不機嫌そうな顔は治らなかった。
いらだちを持ったまま、前方を睨みつけるようにしている。
「平民の奴らは予定通りのこともできぬか、無能が」
その怒りは同盟軍だけではなく、前線で戦う味方にも向いているようだ。
前線には一部を除いて、多くが平民である。
彼らにとって、平民は使い捨ての駒のようなものだ。
前線で戦わせて、死ねば新たに補充する。
それが平民たちに戦う力をつけ、今後――いや、今も台頭することになるのだが、ヴァルテンベルクを始めとして、門閥貴族の多くは知ることはない。
被害が拡大していると聞いても、考えるのは戦死者のことではない。
このままでは要塞司令官に手柄をもっていかれるかもしれないという、自己の保身によるところで
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