直死の魔眼と神々の義眼くっつけて最強っていう安直すぎるアイデアってどうかと思うの。と書きつつ直死出てこない短編
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常であるこの町でも普通に選択できる。
それは裏返せば、どんな絶望が待つ場所でも自分を裏切らず前に進み続けられるということでもある。
彼の友人の一人が言っていた。レオくんの普通とは、本人は無自覚だが「勇敢」とか「高潔」と言われることだ、と。レオくんにとってそれを通すことがあまりにも普通のことだから、それに立ちはだかる様々な障害を前に彼は折れる事を知らない。いや、人並みに打ちひしがれたりはするのだが、それでも最終的には目的地に辿り着いてしまう――そんなひたむきさのある少年だ。
私は、普通じゃいられなかった。生前も死後も、自らにとってスパイが天職であることを疑ったことなどありはしない。だけど、自分を騙すことに慣れ過ぎた私は、普通なことを普通に貫き通したことなどない。だからスパイをしていない普通の女の幸せに、憧れてしまうことはある。
普通に男を愛し、結婚し、子供を産んで育て、それで最後には孫にでも看取られながら天寿を全うする。たったそれだけのことが出来れば、きっと私は英霊の座から消えてしまうほど幸せだろう。でも実際には英霊として召喚され、いろんな仲間やいろんな敵を相手に騙し騙され、守り守られ、最終的にはハチャメチャな物語の一部になってしまっている。
嫌ではない。何度も言うが、後悔してるとかウンザリしてるとか、そういうことじゃない。気の合う仲間と親しくなったり、愛しいマスターを得たり、良いことはたくさんある。それでも普通であることを幸せだろうと思っているのは、きっとそこに自分ではたどり着けないからこその羨望、或いは運命を感じ取っているんだろう。
――その憧れが、多分レオくんなのだ。
彼はどんなにハチャメチャな状況でもNoと言えばNoで、どんな苦難に打ちのめされて立ち往生しても、決して足の向きを変えてしまわないのだろう。どこかカルデアのマスターにも似ているそれは、私を前にしてもそのまんまだ。だから私も、彼に特別着飾った自分を見せなくていい。
「マルガレーテさん右の敵やっちゃってください。俺正面やります!」
「りょーかい!さぁ、私の可愛いケルベロスちゃんが火を吹くわよ〜!」
肩が触れ合うには少し遠いけれど、時々ふっと触れ合ってしまうようなこの距離感を保てるこの部屋での時間が、今の私にとってはどうしようもなく嬉しい時間だ。レオくんの普通と同じ場所で同じようにいられる。
例え部屋を出た先に普通なんて欠片もなくて、私がスパイとして演じ続けるうちに真実の在処なんてわからなくなってしまっても、きっとレオくんの部屋に戻ってくれば彼は普通のままでいてくれている。ちょっと情けなくて根性があるのかないのか分からなくて、何故か似たような性格の友達が多くて王子様には程遠い普通の彼の事が、私は――。
「ここが特
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