大学生そうゆな
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説明をした。嘘を付くときの癖で、視線を奏輝から外しながら更に取り繕った言葉を並べていく。
「それから───
「つまらない嘘をつくなよ」
その言葉に、葛原は驚いて奏輝を見る。顔は依然として朗らかな笑顔なのだが──前髪に隠れた右目、それだけは先程とは違って開かれていて、眼光が自身を殺そうかという程の鋭さを持っていた。
「ソフトドリンク……例えばカルピスソーダを頼んだ幸奈さんが席を離れている時にカルピスサワーと入れ替えて飲ませた。その後に飲めるじゃん等と言いくるめて飲ませて、酔わせてから更に一杯飲ませた……と、そんなところですかね?」
「な、なんで……わかっ……も、もしかして……!」
見ていたのか、そう聞く前に奏輝はいえいえ、と言葉を先読みして否定した。
「ただの予想ですよ。もしあの場に居たらそれこそお開きになった瞬間に駆け付けますよ」
葛原には、既に目の前でずっと幸奈をお姫様だっこしている青年が人間にすら見えない状態になっていた。
逸脱した想像力、柔和な笑顔に隠した冷たさ、細身なのに女の子をずっと持ち上げているその腕力に戦慄していた。
「す、すまなかっ」
「謝罪は要りません。そもそも反省する気が無いでしょう?」
「っ! そ、そんな事は無い! オレは」
「分かるんですよ。貴方のように嘘をつくことに慣れていて出任せばかりを吐く人は特に」
全て、奏輝の言うとおりだった。もうなにも反論が出来ず葛原は忌々しそうに奏輝を睨むことしかできなくなっていた。
「俺からの話は終わりです。貴方は何かありますか?」
「……ない」
「そうですか。時間を取らせてしまい本当に申し訳ありませんでした。最後に1つだけお願いを──」
言葉をそう区切った瞬間、奏輝の顔がガラリと変わった。それを見た葛原は背中が一瞬で凍りつくかのような悪寒に襲われた。
「二度と俺の幸奈に触れるな」
では、さようなら。とこれまた一瞬で笑顔に戻った奏輝が一礼をしてスタスタと去っていく。
「なんなんだよ……アイツ……」
葛原は奏輝の圧力に負け、暫くその場から動くことが出来なかった。
「そう、き、くん……ごめん、なさい」
奏輝の両腕で眠っている幸奈は時折奏輝への謝罪を口にしていた。それを聞くたび、「幸奈さんは何も悪くないんですから、謝らなくていいんですよ」と優しく声を掛けていた。
アパートに着き、奏輝は幸奈をそのまま寝室まで運んでベッドの上に寝させた。
「ゆっくり休んでください。俺のお姫様」
行きのお返しとばかりに、奏輝は寝ている幸奈の頬に軽くキスをしていつも通り同じベッドで眠りについた。
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