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インフィニット・ゲスエロス
閑話4 ヒカルノと太郎(表面)【前編】
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、先程まで険しかった顔を、にこりと笑顔に変えた。

「でも、『直ぐに漠然と何かしろ!』なんて事を言われても困るよね?分かるよ」

そう、あからさまに優しい口調で言い始めた太郎に、ヒカルノの背筋に悪寒が走る。

に、逃げないと…………

だが、部室の出口の関係上、この位置からこっそり出ることは、不可能。

そして、この空気で目立つ真似をしようものならどの様な奇異の目を向けられるか、そんなこと考えなくても分かった。

つまり?→八方塞がりだよ!

ガッデム!

そう心中で叫んでいる間にも、事態は動いていた。

太郎は、掴んでいた紙束の後ろから、ホチキス止めされた十枚程度の書類を、部長の前まで歩いて渡す。

ゾンビの如く、ふらふらとその紙をつかむ部長。

その部長に対して、努めて優しい声で太郎は続ける。

「簡単にだけど、建て直し計画を立ててきたんだ。勿論、生徒会などにも根回しは済んでるから、これをやれば部費は元の値段貰えるよ」

元のように『自由に使える』とは、言わないのがミソである。

「お、おぉお………………」

地獄に垂らされた、蜘蛛の糸。

声を上げた部長は勿論、周囲の部員の表情にも安堵が広がる。

それを待って、太郎は最後にこう言った。

「同意が得られて何よりだよ。なら直ぐに生徒会に報告したいから、パソコン部の代表として、一応、彼女を借りるね?」

………………。ヱ?

なんで話の中に私を連れていくの組み込んでるの?

これ、断れないじゃん?

副部長と歓喜の涙で抱き合っている部員や、早速太郎の書類の中身を見ている部員を横目に、私は頭を押さえながら、言った。

「あー、はいはい、行きますよ、太郎さま〜」

そう投げやりに言う、私に向かって、気づいてないかのように振る舞う太郎は、こう言った。

「名前を知っていただいているようで、何よりだよ。話が早くて済む」

そして、彼は部室から二人で出ながらこう、言った。

「君は僕を知ってるらしいけど、僕は君の名前を知らないんだ?だから教えてくれ…………君の名を?」

これが、私と太郎のファーストコンタクト。







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