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戦国異伝供書
第四話 治世の功その十三
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「それならば」
「お主も出来るであろう」
「それが政なら。しかしです」
「それでも禄はか」
「あまりいりませぬな。万石取りともなれば窮屈ですからな」
 そうしたものだからだというのだ、慶次にとっては。
「それがしはやはり傾奇者」
「傾いてこそか」
「それが一生なので」
 だからだというのだ。
「叔父上の様な禄も格式もいりませぬので」
「まあ急にそうした話になったのう」
 織田家の一介の赤母衣衆からとだ、前田もそれは言った。
「わしもな、猿は尚更じゃな」
「はい、しかしです」
「お主はあくまで傾いてか」
「そうして生きていきまする」
「変わった奴じゃ。しかしその変わったものこそがな」
 前田はここで笑った、彼にしても槍の又左とまで言われ尾張に名の知られた傾奇者だった、それならばだった。
「傾きじゃな」
「流石叔父上、わかっておられますな」
「当たり前じゃ、お主とも何度殴り合った」
「ははは、数え切れませぬな」
「二人共顔の形が変わるまで殴り合ったな」
「そうしたことも多かったですな」
「だからじゃ」
 そうしたやり取りもあったからだというのだ。
「わしもじゃ」
「そうしたことはですか」
「わかるわ」
 そうなる様になったというのだ。
「よくな」
「それでは」
「うむ、ではお主はな」
「死ぬまで大不便者であり」
「傾いてか」
「生きていきまする」
「それがお主じゃな。なら今はな」
 前田は自ら酒を出した、そのうえで慶次に言った。
「どんどん飲め」
「そうして宜しいでしょうか」
「今宵は二人で倒れるまで飲もうぞ」
「飲み比べでしょうか」
「違う、今日は勝負でなくな」
 それでなく、というのだ。
「ただ心ゆきなく楽しくじゃ」
「飲むものですか」
「そうしようぞ」
「ですか。それでは」
「今はな。しかし殿は昔からな」
 ここで前田は信長の話もした。
「酒はな」
「はい、飲まれませぬな」
「どうもな」
「飲むことが出来ませぬな」
「その様じゃな」
「だからですな」
「飲まれぬのじゃ」
 そうだというのだ。
「あの方はな」
「時折そうした御仁がおられますな」
「うむ、酒は全く飲めぬという御仁がな」
「上杉虎千代殿はかなりの酒豪と聞きますが」
 それこそ自分達以上にというのだ。
「それでも殿はですな」
「酒についてはそうじゃ」
 飲めるのというのだ、それこそ全くと言っていい程に。「それもまた殿であるな」
「ですな。元服される前から甘いものがお好きで」
「柿なり何なりな」
「それで酒については」
「飲まれぬ」
 それが信長だというのだ。
「飲まれても一口程度じゃな」
「それで酔われてしまいますな」
「このことを知らぬとな」
「殿
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