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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第二部 原作開始
序章 王都炎上
第十九話 焚書未遂
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たのだ。そんな事が許されていいのだろうか。いや、いいはずがない。

ルシタニア人は勿論だが、ヒルメス殿下も必ず俺たちの手で叩き潰す。だが、まずは国王夫妻の安否を知ることだ。それが判らなくては取るべき選択肢が限られてしまう。驚くべき情報をもたらしたラクシュ殿も、自分たちが王都を離れて以降のことは知らないという。何となれば、ラジェンドラ殿下は王太子である兄に戦いを挑んで敗れ、国を逐われた身の上であり、その際にほとんど全ての諜者を没収され、残ったのはラクシュ殿を含めて四人の女諜者と武将二人のみだという。最早情報を湯水のように得る手段はない訳だ。ならば、俺とダリューンで王都に潜入するしかない。聞けばヒルメス殿下の剣腕はダリューンに匹敵するという。余人に任せては危険すぎるからな。


王都に潜入したその日、南門前の広場で、焚書の儀式が盛大に執り行われようとしていた。だが、それに真っ向から異を唱えたものがいた。口ひげは黒々としているものの、後頭部に僅かに残った頭髪は白い、どちらかと言えば学究肌の線の細い六十歳前後の男だ。それが口角泡を飛ばして大司教らしき男に詰め寄っている。

「確かにこれらは異教の書物であろう。だが、これ程貴重な書物の数々をろくに研究もせぬまま渦中に投じようとは何事だ!十分な時間を掛けてその価値を判断してからでも遅くはあるまい!」

「い、いや、貴重だとしても聖典と同じことが書かれているなら聖典さえあればいいので必要ないし、聖典にないことが書かれているならそれは涜神の書だ。焼き捨てても構わぬはずだ!そうであろう?」

どうにも大司教とやらは押され気味だ。そう言えば、先日ジャン・ボダンとかいう名の先代の大司教がラクシュ殿の弓にかかって死んだばかりで、今ここに居る大司教はその地位を引き継いだばかりなのだろう。そして人選にも成功したとも言い難いようだ。貫禄がない。迫力もない。

「知っておるか!パルスには麻酔という技術がある。そのまま手術しては痛みで死んでしまいかねない患者を眠らせ、安全に手術を執り行うというものじゃ。それがあればどれだけの負傷兵が命を落とさずに済んだと思う?そんな有用な技術をただ聖典に書いてないことだからと闇に葬るつもりか!それが神の御心に適うことだと思うのか!」

「そ…それは…」

口ごもる大司教の前に悠然と進み出た者がいた。「王弟ギスカール様だ」との囁きが周囲のルシタニア兵から聞こえる。

「もう良い、控えよ!…大司教!バルカシオンの申すとおりだ。何ら確認も行わずに全てを焼くことは私が許さん!」

「…で、ですが王弟殿下…」

「何だ!私の命令に従えないというのか!祈るか異教徒を責め殺すしか能のないお主ら聖職者が、軍を編成し、指揮し、自ら戦ってきた我らより尊いとでもいうつもりか!増長するの
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