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ノーゲーム・ノーライフ・ディファレンシア
第5話 過去と少年
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た策士だが、それが相手の過失か確認しない手落ちの策士と誤解させる。
そのダブルバインドに、ジブリールは見事に欺かれてしまったという訳だ。だが、それはむしろ当然とさえ言えた────異常なのは、そんな策を容易く編んでみせたシグの方だ。



だが。



シグは、唐突に浮かべていた薄笑いを失った。まるで、()()()()()()()()()()()────その表情を一変させた。
ペテン師然とした薄笑いは今や無く、代わりに彼の顔には苦悩と言うべき表情が張り付いていた。
そして────ついに彼は堪えきれなくなったかのように、叫んだ。



「ちくしょう、またかよッ!!ふざけんなよゴミクズが!!」



────策士の顔など、そこには無かった。
色濃く自己嫌悪と怒りを乗せて、彼は自分自身に向けて罵倒を重ねる。

「また騙した!!自分も!!他人も!!どこまで恥を上塗りする気だ『シグ』!!」

少年は歯軋りした。人目もはばかること無く叫んだ。────自分の過去を、フラッシュバックさせて。



────少年に、およそ自由と呼べるものはなかった。
家庭では、両親のストレスのはけ口として。
学校では、子供の無邪気な悪意の対象として。
ただひたすらに殴られ、蔑まれ、疎まれた。何もしていない彼を、だが誰もが敵と看做した。
そんな、『迫害』と呼ぶべき差別の中で少年は生きていた。
ありふれた不幸だろう。────不幸のレベルを除けば。
そんな迫害の中で生きた少年が、普通でいられるはずがない。やがて少年は、顔色を伺う技能を昇華させ────人の感情を、完璧に理解する技能を身につけた。
────そこで少年は、遂ぞ絶望した。

少年を傷つける者の中に、()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。
────誰でも良かったのだ。悪意の矛先を向けられる、スケープゴートになるなら。
そんな理不尽、覆すなど少年には出来ない事だった。故に、少年は────絶望したのだ。



────居場所なんてない。作る事も出来ない。自分に出来ることなど────何一つとしてない。



少年は、遂ぞ得たただ一つの絶望(こたえ)だけを抱えて────その目を暗く淀ませたのだった。



そうして、間もなく彼は里親に出され、ずっと引きこもってゲームをするようになった。
非現実(ゲーム)だけが、少年の居場所だった。虚構(ゲーム)だけが、彼を認めてくれる全てだった。
────彼は勝ち続けた。居場所を失わない為に。
だが彼は、
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