巻ノ百四十八 適わなかった夢その六
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駿府に向かった、途中大坂に寄ったが。
その大坂を見てだ、幸村は言った。まだ戦の跡は残っているが町は戻ろうとしており城もだった。
「ふむ、もうか」
「建てられはじめておるな」
「左様ですな」
こう後藤に応えた。
「本丸だけになり天守も焼け落ちたというのに」
「天守までもがな」
「土台だけとはいえ」
今はまだそれが建てられている最中だった、天守閣は影も形もない。だがそれでもだった。
天守閣が建てられようとしているのも見てだ、幸村は言った。
「あの巨城ではないとはいえ城も再び出来」
「街もな」
「蘇ろうとしていますな」
「うむ、むしろな」
後藤は再建されようとしているその街を見て幸村に話した。見れば他の面々も彼等が戦っていたその街を見ている。
「前は城が大きかったが」
「今度の城は遥かに小さいですな」
「うむ」
まさにというのだ。
「そしてその分な」
「街は広くなり」
「その分町人達が多く住めて」
「よき街になりそうですな」
「全くじゃ」
後藤もこう言った。
「幕府は確かによく考えておるわ」
「政を」
「大坂についてもな」
「この街から西国全体を治めますが」
「ただ治めるだけでなくな」
「賑やかな街にもしますな」
「天下の台所か」
「そうですな、それにして」
まさにというのだ。
「幕府を栄えさせますか」
「そこまで考えておるな」
「そうして大坂の街を再建させていますな」
「左様じゃな」
「今度の大坂城は治める城であり」
「大坂は町人の街となるな」
「ですな、それがよいですな」
まさにと言う幸村だった。
「これからの天下の為には」
「全くじゃ、ではな」
「大坂は蘇りそうした街になるということで」
「その大坂のはじまりを観たな」
「ですな、それでは」
「駿府にな」
「向かいましょうぞ」
こうしてだった、一行はその蘇ろうとしている大坂も見てそのうえであらためて駿府に向かった。その歩く速さはまさに馬で進むより速く。
駿府まであと少しのところにまで来た、その駿府のある駿河に入ったのだ。長曾我部はここで山の中で休む中で言った。
「いや、もうとはな」
「駿河に入ったとは」
明石も言ってきた、一行は今は山の中で捕らえた猪を山菜と共に鍋にして食べてそのうえで夕食としている。
「信じられない速さですな」
「全く以てな」
「これが真田家の忍道ですか」
「健脚ならばまさにあっという間に薩摩から駿府まで行けるな」
「まことに恐ろしい道でござる」
「全くじゃ」
こう二人で話す、そして大助が二人に話した。
「当家は天下にこの真田道を巡らしていまして」
「天下の至るところにか」
「あっという間に行き来出来るのか」
「はい、実は九度山にいた
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