第五次イゼルローン要塞攻防戦1
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ンハルトに集中する。
だが、彼は表情を変えることはなく、同様の指示をもう一度出した。
「艦隊を後進させ、戦艦の防御壁内に配置。射撃は通常へ戻せ」
「戦いには機というものがある。敵は損害を受けてひるんでいる、この時こそ攻撃を仕掛けるべきではないかね」
「巡航艦一隻程度では敵をひるませることもできない」
周囲に聞かせるようにラインハルトは呟いた。
その心中では、巡航艦一隻を撃破し、これ以上は危険性の方が大きくなるとした合理的な考えによるものであったが、そこまでを教える必要もないと黙った。
いいから下げろといったラインハルトの様子に、駆逐艦エルムラントUは緩やかに艦を後退させていく。元より小さな艦は移動による制限を受けることなく、開戦時と同位置にまで戻った。
クルムバッハの言葉を無視するような行為に、怒りの色が強くなる。
だが、この場には彼の言葉を聞くような、彼の言う高貴な人間はいなかった。
駆逐艦の乗員の数は少なく、その多くが平民に位置する者たちである。
搭乗するだけで、他に策を考えつかなかったのが、クルムバッハの限界ともいえたかもしれない。本当にラインハルトを亡き者にするのであれば、この艦にクルムバッハの縁者を乗り合わせたことであろう。だが、その協力者はイゼルローン要塞にいて、この場ではなんら役にも立たない。
だからこそ、彼は今も怒りを込めた視線を向けて、悪態をつくのが精いっぱいだが。
「腰抜けが……ひっ」
呟いた彼の目に、先ほどに倍するレーザーの雨が襲い掛かった。
甲高くも小さな悲鳴だが、その多くは隠れた戦艦の防御壁に阻まれ、残す少数は駆逐艦の脇を抜けていった。
敵との距離が近くなり、さらには巡航艦の仇を取ろうと敵が狙いを絞って来た。
少し考えればわかるはずであろう行動であるが、クルムバッハは慌てたように叫んだ。
「下がれ、もっと下がれ!」
時期はどこいったのかと、ラインハルトは苦笑する。
ただ一人が取り乱すことで、周囲の兵士たちの中でも動揺は少なくなっているようだ。
悲鳴を上げる前に、それ以上に大きく悲鳴を上げるのだから。
無能かと思ったが、随分といい役割をしてくれる。
「いかがしましょう」
「この位置で構わない。これ以上後ろに下がっても、後方の陣営の邪魔になるだけだ。現在の位置を保持して、敵に対して攻撃を加えろ。狙いは気にしなくてもいい」
本来であれば、こちらに狙いを絞ったのであれば、狙われなかった艦隊がより能動的に活動できるのであろうが、それ以上のことはラインハルトの任務外のことである。背後で下がれと喚き散らす雑音を聞きながら、ラインハルトはキルヒアイスに視線を向けた。
ゆっくりとキルヒアイスがラインハルトに近づく。
「静かにさせ
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