第五次イゼルローン要塞攻防戦1
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場所をオーディンの一等地で、三ツ星ホテルと勘違いしているようだ。
だが、ここまで見苦しくはなくとも兵士の中でも不安な表情をするものは多い。
視線を正面へと向け、ラインハルトは落ち着いたように声を出した。
「死ぬ気などない。開戦早々では、遠すぎて敵も牽制程度の砲撃しか向けてこない。砲撃を集中することもできなければ、広い宇宙で敵の砲撃が小さな駆逐艦を捉える可能性など、高額なビンゴにあたるようなものだ。ならば、我々が攻撃する時期は今をもってはない。気にするな、どんどん打ち込め」
自信を持った堂々とした態度とともに、断言をするように命じられた言葉。
腕を組んだままに命令する、若い獅子のようだ。
その威容に、誰もがヤーとだけを応えて、攻撃へと戻った。
時折攻撃が、防御壁をかすめて、光を瞬かせる。
だが、それでも前へと臆することなく進み、砲撃を繰り返す。
それを見ながら、キルヒアイスは笑い、そっとラインハルトに近づいた。
「しかし、ビンゴしたらどうしましょうか」
「ふん。その時は誰も批判する人間などいなくなる、簡単なことだ」
返したラインハルトの言葉に、キルヒアイスは口元を手で隠して、笑う。
「何を話している。ミューゼル少佐、このような無謀な行為は断じて憲兵隊員として許しておけるものではない。今すぐ下がれ」
「結構。この場では戦場のいろはなど存じぬ憲兵隊の許可など不要です、クルムバッハ少佐。ここでの指揮官は卿ではない。静かにできぬというのであれば、キルヒアイス!」
「クルムバッハ少佐。そちらにかけてお待ちください。これ以上、指揮に口を挟まれるのでしたら、艦長の権限において強制的に部屋に戻っていただきます」
「平民風情が、誰に口をきいて――」
クルムバッハが怒りを浮かべて、腰へと手を伸ばしかけた。
その瞬間に、前方のモニターに赤い光を映った。
「敵、巡航艦の反応が消失。撃沈した模様!」
砲術士官が、喜びよりも驚きを浮かべた声をあげた。
「よくやった」
ラインハルトの短い誉め言葉に、艦橋が喜びに沸いた。
言葉を出すタイミングを失ったクルムバッハはさすような視線をラインハルトに向けた。目に入るのは当然といった様子で前方を見る金髪の小僧と、クルムバッハに視線を向けて、その一挙手一投足を見るような赤毛の少年だ。
「この場の行為を覚えていることだ。後悔するぞ」
吐き捨てるように呟けば、クルムバッハはすぐ近くにある椅子に音を立てて、座った。
殺してやる。
小さな呟きは、終わらぬ歓声にかき消されたのだった。
+ + +
赤い花火が遠くで上がるのを見届けて、ラインハルトは後退の指示を出した。
戦火に沸く中で、水を差された様子に、問いの視線がライ
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