第五次イゼルローン要塞攻防戦1
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花火の数が増え、代わりに叫ぶ声が少なくなった。
損耗艦艇を個別に報告もできず、損耗率だけが機械的に計上されていく。
友人も、同僚も、恋人も――聞こえる損耗率の報告には上がらず、ただ無事だけを祈りながら戦い続ける。
午後一時五十五分。
わずか数十分余りで、数千人の人命が失われた。
戦いはまだ始まったばかりであった。
+ + +
『ファイエル』
「ファイエル」
指令が流れるとほぼ同時、ラインハルトは一言呟いた。
艦橋で前部の大型モニターに、ラインハルトの乗艦する駆逐艦エルムラントUから真っ直ぐな光が伸びていった。
数秒後、それに倍する光の雨が向かう。
それが防御壁に中和されて、微かな光を放った。
静かだ。
元々駆逐艦ということもあって、少数しかいない空間である。
そこでラインハルトは興奮した様子も見せず、ただ腕を組んで状況を見るのみ。
艦長がそんな様子であれば、周囲が騒げるはずもない。
本来ならばあるはずの、戦場の熱気は潜め、ただ静けさが広がっている。
しかし、数回の応酬の後に、静けさは鋭い声とともに消えた。
「艦を前進し、艦列の前へ。敵艦隊右翼――主砲斉射三連!」
腕の伸ばして告げられた言葉。
驚いたようにちらりと見る兵士であったが、鋭い言葉に手元が自動的にコンソールを叩く。駆逐艦が動いて、艦隊の最前列へと進んだ。
「馬鹿な、何を考えている。最前列など!」
「決められた領域内における艦隊運動は、特段の命令がない限り艦長の専決事項です」
「そんなことは知っている。キルヒアイス中尉!」
叫ぶようにクルムバッハが呟いた。
元々がラインハルトは最前列に近い分艦隊の配置だ。
だが、当然のことながら、この艦隊はここと座標が確定されるわけではない。
刻一刻と動く艦隊で、同一の場所に居続けることは不可能だからだ。
だが、もとより駆逐艦は周囲の大型艦隊に比べて小さく、その分スペースを取らない。
大型の巡航艦や戦艦の防御壁の中で、安全に攻撃をすることも可能であった。
わざわざ、全ての艦隊の前に出ていく必要はない。
小さいことが災いしてか、いまでは最前列に出ている。
そこで、主砲三連だ。
攻撃に全力を注ぐ砲撃は、威力とともに防御壁のエネルギーまでも消費する。
即ち、駆逐艦ならばともかく、巡航艦以上の砲撃があれば、防御壁など意味なさず、塵に消えることだろう。
「死ぬ気か、ミューゼル少佐!」
クルムバッハは悲鳴のような声をあげて、目を血走らせてラインハルトを睨んだ。
おろかと、冷たい視線がクルムバッハを捉える。
最前線であろうと、戦艦の陰に隠れていれば命は助かるとでも思ったのだろう。
相変わらず、この
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