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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
なんか出てきちゃったお蔵入り短編
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俺も誘われたことはあるが、興味が無かったので断った。

 そう、興味がないのだ。
 金にも酒にも地位にも誘惑にも、自分の将来にも興味がない。
 興味があったのは、きっと、居場所。

 あのどうしようもない屑たちと笑いあった俺が存在出来た、居場所。

「この国には、もう俺の居場所はないんだな」

 連中は死んだ。つまり、俺の居場所は過ぎ去った幻影になったのだ。

 ならば、探さなければならない。
 俺のような血に塗れた人殺しが収まり、俺のスキルで生きていける場所を見つけなければならない。

 この国は駄目だ。ここは島と呼ぶには巨大だったが、大陸と呼ぶには狭すぎる。だから統一連合国家の誕生と共に戦争相手をなくしてしまった。戦乱の最中に魔石を求めた魔物狩りが何度もあった所為で、魔物も碌に存在しない。大きな戦いは向こう数十年起きる事はないだろう。

 俺は戦後に復興された市場で一番高い酒を一本買って、傭兵団の共同墓地の墓石にそれを振りかけた。
 連中の安月給では到底手が届かなかった、本当に高級な『神酒』だ。安酒に慣れた連中の舌に合うかは分からないが、文句は地獄に行ってから聞くことにした。

「俺、大陸の方に行くよ。あっちはまだ戦争やってるらしいからな………どうも平和な世界ってのは、俺にとって居心地が悪いらしい」

 戦争が終わって初めて気付かされる。他人が尊いとのたまう平和に何の価値も見いだせない、戦争に染まりきった自分自身を。子供たちが戯れる光景を、人々の笑い声を、活気ある町を見る度に心のどこかで苛立ちを覚える自分の汚れきった心に。

 ここは居心地が悪い。地獄に近い騒乱の世界こそが俺の居場所だ。

「流石にどこで戦争するかまでは決めてないけどさ。まぁ、間違っても天国には辿り着かんよ」

 最後に、すこしばかり残った『神酒』を自分の口に含んで呑み込む。
 酒瓶から口を離した俺は、空になった酒瓶を墓の横に放り投げてその場を後にした。


 それから一年後、オラリオの冒険者名簿に一人の男の名前が書きこまれる。


 ――エドヴァルト・アンガウルという一人のヒューマンの名が。



 = =



 エドヴァルト・アンガウル――種族、ヒューマン。

  ≪来歴≫
 奴隷身分地域の生まれ。両親不明。5歳より奴隷として隷属を開始。
 7歳の頃に戦争奴隷として初陣。その後1年間従軍し、終戦まで生き残る。
 8歳の頃に奴隷身分から解放され、その後すぐに仲間と共に『フリードマン傭兵団』を設立。
 以降6年間傭兵団の一員として戦場を転々とし、14歳になる頃に終戦を迎える。
 その後傭兵団の代表となるが、傭兵団の維持が困難になったことを理由に解散。
 残った資金を元手に大陸行きの貿易
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