なんか出てきちゃったお蔵入り短編
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て天国に行けるのだろうか。神から頼られる位だからその志は高く、きっと良い所へ行けるのだろう。それを別段うらやむ気概は発生しない。連中は連中という生き物で、俺達は俺達という生き物だ。生きる世界が違う。
傭兵として渡り歩くうちに、見知った顔は次々に地獄へ旅立っていく。
リーダー格だったドワーフおやじ、同期だった剣士のアマゾネス、心配してくれたエルフの青年……種族という単位を俺達は気に留めなかった。どんなに強くなろうと、才能にどんな違いがあろうと、人間は所詮人間の域を脱することはなかったからだ。
正々堂々勝負をしろとほざく騎士を相手に目潰しで隙を作ってから『お望み通り一騎打ちしてやった』こともある。後になってそいつはレベル2だった事を知って、俺は馬鹿馬鹿しい気分になった。結局、敵も味方も恩恵持ちもそうでない奴も、死ぬ時は死ぬのだ。
やがて俺が15歳になった頃――俺の住んでいた地域は統一連合国家として生まれ変わり、戦争の連鎖が集結した。戦場のど真ん中で集中砲火を受けてくたばり掛けだった俺に情けをかけた兵士がそれを伝えてくれた。その頃には「フリードマン傭兵団」の初期メンバーは俺を除いて全員がくたばっていて、後から来たメンツも壊滅状態だった。
もうすこし早く地方にも終戦の知らせが届いていれば死ななかった命もあった。
だが、情報伝達が遅れるなど戦場ではよくあることだ。俺はそう思って気にしなかった。
戦争が終息して、元奴隷の傭兵団は解散した。各々が田舎に引っ込んだり、実績を買われて正規軍に入ったりとそれぞれの道を歩んだ。俺はそんな仲間たちを見送って、一人になった。
身体と金だけ手元に残り、それ以外は何もなくなった。
俺はいつだって戦争の中で生きてきた。その前は奴隷として。生き残る術を学んでは来たが、世渡りの術など学んではいない。『平和』とやらの訪れた国の中で過ごすことが酷く場違いで、もどかしく、そして惨めに思えた。
この時になって俺は気付かされた。
自分が生きる意味が分からない。
かつては死にたくないという生存本能に縋って生きてきた。それから、食うに困って再び戦火に身を投げ入れた。どちらにも明確な理由があって戦ってきた。だが、戦場に身を窶すうちに生存本能は薄れてゆき、機械的に殺人を効率化することばかりに傾倒していった。食うに困っていたのも、その時は何もかもが足りなかったからだ。今は傭兵として得てきた潤沢な資金が手元に残されている。
大人たちはこいつで高価な武器を買いこみ、高い酒を呷り、ギャンブルの類で豪遊しては財布を空にしていた。あるいは活躍することで上からのスカウトを狙っていた連中もいた。上手く行った奴もいれば、死んだ奴もいる。それだけだった。
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