なんか出てきちゃったお蔵入り短編
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やがて、死に対する感覚がマヒしてきた。
敵を殺すたびに震える夜を過ごす者を「新兵」と呼ぶ立場になった。仲間が死んだときに涙が零れなくなった。自分の真横を殺人級の魔法が通り過ぎても「今のは死んでもおかしくなかったな」と他人事のように考えるようになった。
嘗て俺達を隷属させた国のように、碌に抵抗できない相手を殺すような仕事も任された。金の為にと言い聞かせ、老人や子供も手にかけた。逆恨みされて襲撃されることもあった。俺より先に仲間が報復し、相手は勝手に死んだ。ゲリラ戦法を編み出して敵を散々に打ちのめしたこともあれば、逆に対応を誤って仲間が藁のように斃れていったこともあった。
生きるために略奪しなければいけないのなら略奪する。自分の命を脅かす相手は速やかに排除する。表沙汰にすると不味い事は隠れてやり、他人に人でなしだと罵られたら「どうでもいい」と返答し、俺達はどんどんと戦争という人の捨て溜まりに染まっていった。
俺達にとっての日常が、戦争になった。
戦いでは誰かが死ぬのは当たり前。誰かが苦しむのは当たり前。涙ながらに命だけはと懇願する兵士も、非道な行いを非難する裏切り者も、殺すかどうかを決めるのは損得勘定。つまり、自分たちの都合のいい方へと常に命を転がした。
そうして血塗れの手に握ったはした金をはたき、俺は共に戦い抜いた戦友と晩飯を食う時間を楽しむようになった。今日はあんなにも殺した。へまをしたあいつがくたばった。そんな不謹慎な話で盛り上がりながら、どうせ俺達も次の晩には死んでしまうかもしれないのだから、今は楽しめばいい。そう思った。
いつか自分も、腐乱した肉のこびり付いた骸骨になって荒野に転がるのだろう。
戦後処理の為に死体を次々に地面の下へ埋めながら、漠然とそう感じた。
敵はよく、地獄に堕ちろと俺達に叫ぶ。
神によるとあの世には天国と地獄があり、いい奴が天国に行くらしい。ならばきっと戦争をしている俺達みたいな奴らはみんな地獄行きだろう、と呟いたら、周囲は「違いない」と大笑いした。
『金の為に散々殺して来たからな。そりゃあ高尚な所には旅立てんだろう』
『ゴミみたいにくたばってハゲタカの腹の中に納まって、クソになって大地に還るだけだ』
『未来なんてモンはねぇ。俺たちゃ俺達の生きたいように生きて、いつかは忘却の中に消えるだけだ』
神たちは自国の戦士たちには『恩恵』を与えて強化し、傭兵たちにはそれをしない。当然と言えば当然だろう。『恩恵』を持つ人間は増やせば増やすほど得をする訳ではない。唯でさえ戦争では管理が大変で貴重な眷属を出来るだけ死なせたくないのだから、俺達のような屑に先陣を切らせて温存する必要があるのだ。
神の声の下に殺人を犯す連中は、果たし
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