第六十四話 あやかしその十三
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「文殊の知恵っちゃな」
「奴は一柱だ、だが俺達はだ」
「三人どころではないっちゃな」
「必ず知恵も出る」
「魔神を倒す知恵がっちゃ」
「そうだ、出る」
間違いなくというのだ。
「そしてその知恵も使ってだ」
「魔神を倒すっちゃ」
「奴のことはまだわからないが」
「それでもっちゃな」
「一人だ」
「ああ、そのことは間違いないな」
ここでまただ、船乗りが話に入ってきた。
「一柱でってことがな」
「よく言われているな」
「ああ」
その通りとだ、船乗りは英雄に答えた。
「一柱で世界をな」
「海で覆っているな」
「そう言われてるぜ」
「ならばだ」
「どんな強い神様でもか」
「そして頭が切れようともな」
「所詮は一柱か」
船乗りは英雄の言わんとしていることを察して述べた。
「そうだっていうんだな」
「やり様もある」
「それで勝つんだな」
「バベルの塔は建てないがその場所に辿り着いてだ」
そうしてというのだ。
「その玉座から蹴落としてやる」
「つまり倒すってことか」
「そうしてやる」
必ず、とだ。英雄は言い切った。
「人間の力を見せてやる」
「強いね、神様に向かうなんてな」
「善神なら尊ぶ、俺達を助けて愛してくれるならな」
英雄は決して神仏を否定しない、それでそうした神については特に何も言わずそうするだけであるのだ。
しかしだ、自分達に害を為す今の魔神の様な神はというのだ。
「降りかかる火の粉を払うしだ」
「やっつけもするか」
「そうする、俺はな」
「自分の身は自分で護る、だな」
「世界もだ」
この世界もというのだ。
「今俺達はこの世界にいるからな」
「その世界を何とかする為にか」
「魔神を倒す」
その考えもあるというのだ、この世界に来た理由を果たす為にも。こうした話をしてだった。英雄はまた飲んだ。
そしてその酒についても述べたのだった。
「美味い、ではな」
「もう一杯飲むか」
「そうさせてもらう」
こう言いつつ飲むのだった、見事な味の刺身と共に。そうして船で志摩に向かうのだった。彼等が目指しているその場所に。
第六十四話 完
2018・5・1
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