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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第二部 原作開始
序章 王都炎上
第十六話 狂猴退場
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徒であるパルス人への畏怖を改めて感じざるを得なかった。我らが神イアルダボート神の恩寵を受けぬ身でありながら、これ程のものを作り上げるとは。パルス軍にはアトロパテネの戦いにおいても人の域を超えた強さを見せつけられた。もし、あの霧が無ければ、銀仮面卿の協力が無ければ、あの戦いに勝つことも、ここエクバターナに至る事も無かったであろう。何と恐ろしい敵であることか。
城壁の余りの威容に諸将が気圧されていると、我らの傍らをすり抜けて、一台の屋根のない馬車が進んでいった。それを守らんとしてか、十騎ほどの騎兵が共に陣頭へと向かっていく。
「おい、モンフェラート、今の馬車、あのジャン・ボダンめが乗っていたぞ?あやつ、何をするつもりだと思う?」
隣にいたボードワンが訝しげな表情をしていたが、俺にも心当たりがない。「さあな」と答えるしか無かった。ただ、どうせろくなことではあるまい。それだけは確かだった。
俺の予想は当たった。大司教にして異端審問官を務めるボダンは、俺たちが苦労して捕らえたパルスの勇将、万騎長シャプールを、見せしめのためになぶり殺しにするつもりのようだ。いつからそんな事までが、大司教の仕事になったというのだ?全く、マルヤムでもアトロパテネでも、坊主のくせに、抵抗する力を失った者を殺しまくる事にばかり精を出しおって、この
「罰当たりめ!」
おっと、声に出てしまったか。ボダンは周りを見回すが、俺が言ったとは判らないようだ。おい、ボードワン、頻りに頷いたりしてるなよ、バレるだろうが!ふふん、ボダンの奴め、更にいきり立って喚き散らしてやがる。図星を指されて内心うろたえてるんだろう。
おお、あのパルスの男、ボダンに物申しているのか?ふふ、小気味いい言いようだ。何故あの男が敵で、ボダンなんぞが味方なのであろうな。あの様な男と同じ旗のもとで共に戦いたかったわ。イアルダボート神よ、何故貴方はかようにこの世を理不尽にお作りになったのか?
「エクバターナの人々よ、どうか頼む。俺のことを思ってくれるなら俺を矢で射ち殺してくれ。俺はどうせもう助からぬのだ。こいつらに殺されるくらいなら、味方の矢で死ぬほうが本望だ!」
あの男はそう叫ぶが、いや、そう言ってもな。城壁からでもここまでどれだけの距離があると思う?さすがにそれは無理―
その時、唸りを上げてこちらに飛び来たったものがあった。一つ、いや二つか。その場に居合わせた全ての者がそれを見た。城壁の上から放たれた一矢がシャプールという男の眉間に突き立ち、そしてもう一本の矢が、
「ぐがっ!!」
大司教ジャン・ボダンの口から入り、首の後ろを射抜いたのだ。
二つの体がどうと倒れた。対照的な表情を表情を浮かべて。一方は満足げな笑みとともに、もう一方は神の無情を呪うかの様な形相で
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