巻ノ百四十七 吉報その十
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「まさに駄目もじゃ」
「仕えさせることはですか」
「出来ぬのであろう」
まさにというのだ。
「あの者はな」
「だからですか」
「天下人になれる者ではないが」
しかしというのだ。
「それでもな」
「あまりにも大きな御仁なので」
「それでじゃ」
「誰もですか」
「家臣には出来ぬ」
「そうした方ですか」
「お主もそう思うだろう」
「はい」
服部もこう答えた。
「あの方については」
「そうであるな、では」
「はい、だからですか」
「わしも諦めたのじゃ」
「左様でありましたか」
「あれで天下を望むならわしも黙ってはおられなかった」
その場合はというのだ。
「何があろうとも首を取っておったわ」
「そうでしたな」
「天下に二日はいらぬからな」
「その場合は」
「あの者の首を取っておった、大坂の戦でそれが出来ぬならな」
「薩摩に刺客を送ってでも」
「あの地に入られるのが厄介なのはわかっておったがな」
それでもというのだ。
「何とかしておった」
「左様でしたか」
「うむ、しかしな」
「真田殿は天下を望んではおられぬ」
「だからな」
「お命まではですか」
「狙おうとは思っておらぬ、次の戦であの者が生きておれば」
「もうそれで戦は終わりですな」
「そうなるしな」
それが為にというのだ。
「あの者は放っておけ」
「わかり申した、それでは」
「あの者は生かしておく様にな」
若し戦で幸村が生きていればというのだ。
「その様にな、他の者達もじゃ」
「さすれば」
「うむ、その様にな。では戦の用意じゃ」
家康は服部に確かな顔で告げてそうして自らも戦の用意に入った、だがこの戦についてはだった。
江戸の秀忠はただ話を聞いているだけでだ、こう言った。
「父上の戦か」
「はい、この度の戦は」
本多正信が秀忠に答える。
「そうした戦でありまして」
「江戸におる余には関係ないか」
「大御所様が言われるに上様はです」
「この江戸においてじゃな」
「はい、しかと政に励み」
戦ではなくだ。
「天下の政をより固める様にと」
「言われておられるか」
「はい、左様です」
「わかった、ではな」
秀忠は本多の言葉に頷いた、そうしてだった。
その本多に確かな声でこう答えたのだった。
「その様にする」
「公方様として」
「働く、ではな」
「はい、その様に」
本多も応えた、だが。
秀忠はその本多の顔を見てだ、心配な顔になり言った。
「お主どうも」
「身体のことですか」
「大丈夫か」
「正直に申し上げていいでしょうか」
「うむ」
秀忠は本多にそれを許した、するとだった。
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