戦い前に〜それぞれの理由〜
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に」
金髪をなびかせて振り返った、視線の先にはクルムバッハの姿がある。
突然に意見を向けられて、クルムバッハは眉をしかめた。
「何をいう。ここの責任者は卿であろう」
「その通りです。では、これよりここは戦場となります。余計な言葉は慎んでいただけますよう」
それが先ほどの言葉をさしていることは、クルムバッハにも理解できた。
だが、艦長よりも先に発言した問題は、仮にも憲兵隊であるクルムバッハも理解している。
ただ恨みを込めた視線と、噛んだ奥歯の音を響かせて返答するのが精いっぱいであった。
そんな様子にラインハルトはまるで少女のような笑みを返し、振り返った。
「何をしている。最初が大事だとキルヒアイス中尉が言ったとおりだ。こちらを見ている暇はないはずだ。戦闘が開始と同時に敵に向けて猛攻をかけろ」
言葉に聞こえるのは、肯定の言葉。
急ぎモニターとコンソールに向き合い始めた将兵を見て、ラインハルトは頷いた。
「挑発が激しいのではないですか、ラインハルト様」
そっと呟いたのはキルヒアイスだ。
耳に寄せるように、ゆっくりとささやいた言葉に、ラインハルトは頷いた。
「そちらも問題はない。私たちの道は結局のところ敵か味方か、だ。これに反論する優秀な人間であれば、味方にすることも考えたが、直情的に行動する奴など、さっさと始末しておいた方がいいだろう」
そっと呟いて、ほほ笑んだ言葉に、キルヒアイスは肩をすくめた。
「恐ろしくなりましたね」
「……甘いと教えてもらったからな」
呟いた言葉に、キルヒアイスはそれ以上の言葉ない。
ただ、静かに頷いた。
「ええ、まことに。私も準備をしておきます」
「頼んだ。キルヒアイス……まだ戦いは始まったばかりだ。死ぬわけにはいかないだろう」
「ええ」
+ + +
第五艦隊分艦隊、ゴールドラッシュ。
艦橋の片隅で、アレス・マクワイルドは静かにモニターに映る光点を見つめていた。
敵艦隊との距離はゆっくりと近づき、艦隊は予備動力でゆっくりと近づいている。
互いの速度を計算すれば、攻撃する時間もほぼ理解できるはずだ。
「艦隊接近。敵攻撃射程範囲まで、二分」
それでも言葉が必死をもって告げられるのは、自らの死が近づいている証であるかもしれない。こればっかりは初めての体験だ。緊張した士官の声と、ささやかながらも大きくなる騒めき。それでいて張り詰めた空間には、誰もが心を動かすだろう。
目の前のモニターを凝視するもの、そして、命令を待って司令官に視線を向けるもの。
その多くの視線と命を預かって、分艦隊司令官であるスレイヤー少将はただ静かにモニターを見つめていた。
今までも何度と繰り返してきたであろう光景。
それは慣
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