36部分:第三話 入学その十二
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第三話 入学その十二
「できても。何かそれって」
「それって?」
「うん・・・・・・私やっぱり」
「だからどうしたんだよ」
俯いて呟いている星華の横で首を捻る陽太郎だった。
「またよ」
「何でもないから。そうだ」
「そうだ?」
「ねえ」
話を変えることにしたのだった。陽太郎に顔を向けてそのうえで彼に対して言ってきたのであった。
「それでだけれど」
「それで?またいきなり何なんだよ」
「参考書とかどうしようかしら」
言ってきたのはこのことだった。
「参考書ね。それは」
「ああ、それな」
陽太郎も言われて気付いた。実は入学や入部のことばかり考えていてその他のことには殆ど頭がいっていなかったのだ。勉強の詳しい中身にもだ。
「それだよな」
「とりあえず教科書見てから考える?」
「そうだよな。けれど」
「けれど?」
「佐藤、御前ちゃんと参考書も使うんだよな」
そのことに驚いた様な言葉だった。
「中学校の時はそんなことは全然なかったのにな」
「変わったのかしら」
首を傾げさせて自分で言ったのだった。
「やっぱり」
「そうかもね。ただ」
「ただ?」
「やっぱり勉強は苦手なのよね」
困った顔になって笑っての言葉だった。
「どうしてもね」
「まあ得意不得意とかもあるしな」
「斉宮は別にそうじゃないわよね」
「いや、俺も別に」
「けれど実際そうじゃない」
自分と比べて遥かに成績のいい彼に対する言葉である。
「斉宮は普通に八条高校に入ったし」
「普通って俺だって毎日真剣に勉強したぞ」
「それでも元々頭よかったじゃない」
「だからな。俺だってな」
「私とは頭の出来が違うのよ」
今度はこんなことを言うのだった。
「違う?それは」
「頭の出来なんて誰だって同じだよ」
「違うわよ。それに」
ここで言葉を止めてしまった。
「私は。大体ここに入ったのは」
「んっ、どうしたんだ?」
「必死に勉強して入ったのは」
それを言うのだった。無意識のうちに。
「それは」
「おい佐藤」
事情を知らないまま星華に声をかける陽太郎だった。
「どうしたんだよ、急に」
「あっ、何でもないわ」
星華は彼の言葉に我に返った。そのうえで彼に顔をやった。
「気にしないで」
「だったらいいけれどな」
「それでね」
さらに言うのであった。
「まあ。これからね」
「これから?」
「三年間宜しくね」
今度言うのはこのことだった。
「三年ね。宜しくね」
「三年か。長いよな」
「中学校の三年は短かったわよね」
「いや、結構長くなかったか?」
「そうかしら。私は短かったと思うけれど」
「終わってみればそうかな」
星華に言われてふと思いなおす陽太郎だった
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