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レーヴァティン
第六十四話 あやかしその一
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               第六十四話  あやかし
 志摩の港を出てだった、英雄達を乗せた船は志摩への湖の路を進んでいた。その湖を見ながらだった。
 愛実はしみじみとした口調でこんなことを言った、一行は今は船の甲板の上に出てそうして景色を見ているのだ。
「海にしか見えないっちゃよ」
「そうですね」
 隣にいる紅葉が応えた。
「こうして船旅に入りますと」
「そうっちゃ。けれどっちゃ」
「この島には海はありません」
「海に見える位大きくてもっちゃ」
「湖です」
 それだというのだ。
「そうです」
「そうっちゃよ。だから伊勢海老や栄螺がいてもっちゃ」
「わたくし達が起きている世界のものとは違います」
「けれど味は同じっちゃ」
 肝心のそれ自体はというのだ。
「海にいるのと」
「それはそうですね」
「あれが不思議っちゃ」
「伊勢海老も栄螺もです」
 無論自分達が本来いる起きた世界とは違うがというのだ。
「やはり伊勢海老は伊勢海老で」
「栄螺は栄螺っちゃな」
「海水性か淡水生の違いはあろうとも」
 それでもというのだ。
「同じ生きものということで」
「味は同じっちゃな」
「そうかと」
 こう愛実に話すのだった。
「思いますに」
「そういうことっちゃな」
「そしてこの島では塩は」
「そうっちゃ、海がないっちゃな」
「日本では塩は海から取りますね」
「そうしてるっちゃ。赤穂でもそうっちゃ」
 あの忠臣蔵の藩の場所だ、赤穂藩は元々塩で有名であり仮名手本忠臣蔵の浅野内匠頭の名前である塩谷判官の名の由来でもある。
「塩田からお塩を取っていたっちゃ」
「海の傍にある」
「そうだったっちゃ」
「それで日本では塩は海から取るものと考えられていますが」
「そればかりではないっちゃからな」
「はい、多くの国では掘ります」
「そうっちゃな」
「岩塩から塩を取ります」
 例えばザルツブルグだ、モーツァルトを生んだこの街は日本語に訳すると塩の城即ち塩の街となる。元々は岩塩の発掘で栄えた街なのだ。
「そうしますので」
「だからっちゃな」
「はい」
 まさにというのだ。
「お塩は山から取るものです」
「それはこの島でもっちゃな」
「そうですね、実際に」
「岩塩の鉱山が沢山あるっちゃ」
「人はお塩がないと生きていられません」
 その身体にだ、だから塩は人にとって欠かせぬものなのだ。
「ですから若しもです」
「この島に塩山がなかったらっちゃ」
「その時は」
「こんなに人が住めなかったちゃな」
「確かに土地は肥え水は豊かで資源は多いですが」
 そうした豊かと言っていい島だが、というのだ。
「しかしです」
「お塩もないとっちゃ」
「島として栄えないですね」
「そうだっちゃ。お
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