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戦国異伝供書
第四話 治世の功その一
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               第四話  治世の功
 長曾我部家も降し四国もそのうちの三国までを領有した織田家は暫し戦をしなかった。だがその間も織田家の者達は暇ではなかった。
 それは羽柴も同じで居城となった近江長浜城で家臣達からの報を聞いていた、それはどれも戦のことではなかった。
 田畑や街、それに堤や橋といったものの話ばかりだった。他には山賊や盗人達をどうするかという話だった。
 羽柴はそのすべてに的確に断を下し家臣達に告げていた。だがそれが一息つくとやれやれといった顔になって言った。
「全く、あれやこれやとな」
「忙しい日々が続きますな」
「全くじゃ、憧れの城主になったが」
 しかしとだ、彼は共にいる秀長に応えた。
「これがじゃ」
「随分と忙しい立場ですな」
「そうじゃ、万石取りで城主になったが」
「そうなればですな」
「その治める領地の面倒を見ねばならん」
 即ち長浜城が治めるべき範囲でだ。
「だからじゃ」
「今の様にですな」
「うむ、何かとな」
「あれやこれやと」
「政に励んでじゃ」
 そのうえでというのだ。
「しかと治めねばならん」
「そうですな。しかしです」
「しかし。何じゃ」
「兄上はしかと治めておられるとです」
 兄を助けている弟としてだ、秀長は羽柴に応えて話した。
「それがしは思いまするが」
「だといいがのう」
「色々と大変ですが」
「それでじゃな」
「それがしも及ばずながらお助けしますので」
 それでというのだ。
「これからもお励みを」
「そうしよう。ではこれからもな」
「学問に励んでいかれますか」
「そうする、しかし当家も大きくなったのう」
「はい、今やですな」
「七百二十万石、相当な大身じゃ」
 上洛と長曾我部家との戦からだ、そうなったというのだ。
「そうなったわ」
「天下一の家になりました」
「そして万石取りもわしだけではない」
「平手殿をはじめとしまして」
「うむ、二十人以上はおる」
「朝廷から官位を頂いた方も」
「それじゃ、わしなぞがじゃ」
 羽柴は秀長の話にまさにと返した。
「官位まで頂いたのじゃぞ」
「帝の御前にも出られる様になりましたな」
「そこまでなるとはな」
 まさにというのだ。
「思いもしなかったわ」
「城主だけでも夢の様で」
「さらに官位までとはな」
「殿がそれだけ兄上を重く見られているということですが」
「わしも己の資質に自信はある」
 羽柴は秀長に袖の中で腕を組んで答えた。
「それで必ず城主になると思っておったが」
「しかし官位までは」
「そこまではとてもじゃ」
 実は官位までは考えていなかった、羽柴もそこまではだったのだ。
 だがそれでも実際に官位まで貰い朝廷で帝の御前に出られる様になった
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