Ep13 なカナいデほしいから
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れていた。温かく、がさがさした、腕に。
魔物の、腕に。
「うぐぅッ!」
フィオルの苦しそうな声。何があったかはわからない。
声が、した。
「あらいやだ。魔物のくせして。他の誰かを守るなんて、ねぇ」
それは、「ゼロ」を飼っていた、妖艶な女の声。
「出して!」
魔物に叫べば。腕はあっさりとリクシアを開放していた。
そして見たのは、
脇腹から血を流し、うずくまるフィオルと、
二本の剣を、リュクシオン=モンスターとフィオル、両方に向けていた女の姿だった。
「フィオル!」
リクシアは叫んで近寄ろうとするが、リュクシオン=モンスターが引き戻す。
「放して、放してえっ! お兄ちゃん、フィオルが死んじゃう! 放してようっ!」
魔物となり果てた兄は女を睨み、暴れる妹を抱いたまま、動かない。女を警戒しているようだ。
それを見、女はつぶやいた。
「両方とも、ひと思いに殺してやろうと思ったのに。天使は反応素早すぎるし、魔導士ちゃんは魔物が守るし……。魔物には、意思なんてないって思っていたのに……。見当違いかしら、ねぇ」
薄く笑って、
「じゃぁ天使ちゃん。これ、貰って行くわねぇ」
投げ出された「シャングリ=ラ」を拾おうと手を伸ばした。
「やめ……ろ……!」
フィオルの苦しそうな声。
「やめてぇぇっ!」
リクシアの叫び。
すると。
「ガァァァアアアアアッッッ!」
リクシアを放り出した怪物の腕が、女を一直線に薙いだ。
「お兄……ちゃん……?」
意思も、理性も、何もかも。無くなったはずなのに。
壊れたような、声が言うのだ。
「いモウとの……タいセツなモの……キずツケさセなイ……!」
「お兄ちゃん!」
「ダかラ……なカナいデ……おクレよ……!」
召喚、された。もう大召喚師ではなくなったリュクシオンから。
天使が、精霊が。たくさんの妖精たちが。
どうして、とリクシアは疑問に思う。魔物になり果てて、意思も想いも、なくしたはずなのに。
わずかに残された残留思念が、奇跡を起こした。
「魔物の……くせにッ!」
叫ぶ女。人外に追われ、あわてて逃げだす。
リクシアはそのさまを、呆然と見ていた。
「お兄……ちゃん」
リュクシオン=モンスターは、首をかしげて妹を見て。
「サヨうナら」
それだけ言い残し、女を追って、歩き出した。
腕。あのとき、守ってくれた、腕。
リュクシオン=モンスターは、怪我をしていた。その大きな腕に。
リクシアを、守ったから。守って代わりに、怪我をした。
(どうして……?)
もしも兄さんに意思が残されているのなら、純粋な敵として、戦えないじゃないか。
守ってくれた、腕。
魔物になっても。
兄さんは兄さんだったの
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