354部分:第二十六話 聴かれたことその十一
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第二十六話 聴かれたことその十一
「よかったら」
「ええと、私は」
「どうするの、それで」
「今はいいから」
「いいの」
「うん。悪いけれど愛ちゃんだけでね」
「わかった」
月美のその言葉に頷く彼女だった。そうしてだった。
そのうえでだ。一人でそのコートの店の近くにあるトイレに入る。そのクリーム色のトイレの個室に入ってだ。そのすぐ後にだった。
トイレの中からだ。声が聞こえてきたのだった。
「やれやれよね」
「全く」
「何だってのよ」
まずはだ。三人の声であった。
「あいつ結局何もしなかったみたいね」
「気付いたら学校からいなくなってたよね」
「そうよね」
橋口に州脇、それと野上だった。その三人の声だった。椎名は個室の中から三人の声を聞くのだった。
「何時学校からいなくなったのかしらね」
「面白くないわよね」
「全く」
「そうよ」
そしてだ。星華の声もだ。椎名は聞いたのだった。
トイレの中にしゃがんだままでだ。話を聞いている。その話は。
「あいつ平気な顔でキャンプファイアーに出てたしね」
「ぼこられたりした感じなかったわよね」
「じゃあ遭わなかったんだ」
「そうなるわよね」
三人はその星華に対して言っていた。個室の中からもそれがわかった。
「まああいつ居合やってるからね」
「所詮不良じゃ相手にならないかもだけど」
「ちょっと痛い目に遭ってればね」
「よかったのよ」
この話はだ。椎名は自然に携帯を取り出して録音した。そしてだ。
四人の話をだ。さらに聞くのだった。
「折角星華ちゃんが誘ったのにね」
「斉宮も薄情じゃない?」
「あっさり断るなんてね」
三人がまた星華に話しているのを聞いた。
「女の子から誘ったのに」
「それで断るなんて」
「酷いじゃない」
「それは」
だが、だった。星華の声はここでは曇った。その曇った声で話すのだった。
「まあ。斉宮だって」
「どうなの?」
「どうかしたの?」
「ううん、やっぱりあれなのかしら」
暗い顔で言っていた。それは椎名にもわかった。
「あいつの方が」
「大丈夫だから」
「まだチャンスあるわよ」
「そうよ」6
すぐにだ。三人がその彼女に言ってきた。椎名はクリーム色の扉の向こう側で聞き続けている。しかも録音もだ。自分の携帯で相変わらず続けている。
だが星華も三人もそのことに全く気付かずにだ。話をしていくのだった。
「だから安心してよ」
「ほらね」
「また誘えばいいじゃない」
「また、なのね」
ここでだった。星華の声が少しだけ気を取り直したのだった。
「次の時にね」
「その時に言えば」
「それでいいじゃない」
「そうしなさいって」
「ええ、じゃあ」
気をさらに取
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