第五章
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「あの、船大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないとな」
ハイメはその中で踏ん張りつつ応えた。
「もうな」
「終わりですよね」
「もうこれ位の船じゃな」
「大きい船ですよね」
「嵐の前には小さいんだよ」
所詮はというのだ。
「だからな」
「船もですか」
「この風と波で粉々になることだってな」
そうした事態もというのだ。
「あるぞ」
「本当ですか」
「ああ、そんな船も見てきた」
ハイメは甲板の状況を見つつホセに話した、ホセはマストにしがみついたまま全く動けていない。
「残骸だがな」
「残骸って」
「この船だって同じだ、ひょっとしたらな」
「大丈夫じゃないですか」
「ああ、だからいいな」
「はい、ここは」
「神様に祈れ、やるべきことは全部やった」
船のそれはというのだ。
「だからな」
「船が壊れない様にですか」
「神様に祈れ」
こうホセに言うのだった、大嵐の中で。そしてだった。
嵐はその日ずっと続いたが夜になるとだった、完全に終わった。ホセは夜空を見てほっとした顔で言った。
「凄かったですね」
「ああ、何とか助かったな」
「船も無事ですね」
「何とかな、しかし御前さん全然酔ってないな」
「酒なんて雨で濡れてとっくに全部抜けてますよ」
「違う、酒の酔いじゃない」
水代わりに飲んでいるそれとはというのだ、水は積んでもすぐに腐るのでそれで腐らない酒を飲んで水分にしているのだ。
「船酔いの方だよ」
「そっちですか」
「御前さん船に乗っている間全然酔わないな」
「酔う奴いるんですか」
「酔う奴は船に乗っているだけでだよ」
まさにそれだけでというのだ。
「酔うんだよ」
「そうなんですか」
「ああ、それがないからな」
だからだというのだ。
「そこはいいな、俺も乗りたての時はな」
「船酔いしてましたか」
「もう辛くて食うなんてな」
それすらもというのだ。
「出来なくてな」
「大変でしたか」
「ああ、酔わないなんていいな」
「そうですか」
「ああ、そのことはいいな」
こうホセに言うのだった、船酔いとは無縁の彼に。とりあえず船は何とか嵐から助かった。しかし。
次の日船はスペイン海軍の見回りの船から必死に逃げてその後でだ、船長は夕方に船の北の方を見て言った。
「おい、まずいぞ」
「また海軍ですか?」
「どっかの海軍の船が来ましたか?」
「あいつの船だ、あれは」
こう乗組員達に言うのだった。
「こっちに来てるぞ」
「っていうとバロアですか」
「バロアがですか」
「こっちに来てますか」
「ああ、すぐに逃げるぞ」
船長は乗組員達に言った。
「いいな」
「はい、わかりました」
「それじゃあです」
「今から逃げましょう」
「全
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