十四 しずめゆく者
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その視線を受け取って、いのは大きく頷くと、手裏剣を取り出した。
再び投擲された手裏剣を見て、サソリは冷笑する。
「何度やっても同じことだ!」
手裏剣が高熱の炎でジュっと焼けていく。だが一枚の手裏剣が溶けていくのを目の当たりにしていたサソリの背中に影が落ちた。
「チッ、ばばあ…!!」
後ろから迫り来る【白秘技・十機近松の集】の傀儡人形。手裏剣で誘導し、背後からの攻撃を仕掛けたチヨが指を動かす。
手のひらの噴射口から炎を発しているサソリは、背中ががら空きだ。そこを狙う。
チヨの指の動きに倣って、傀儡人形が一斉にサソリの背中目掛けて、一斉に襲い掛かった。振り向く暇すら与えず、傀儡人形の影がサソリを覆う。影の中、サソリの指がピクリ、動いた。
「忘れてねぇか、チヨ婆…俺は傀儡師だぜ?」
先ほど脱いだ『暁』の外套。その衣がふわり、舞い上がる。
潜ませていた巻物が空を舞ったかと思うと、白煙が立ち昇った。
「懐かしい顔に会わせてやるよ、チヨ婆」
振り返る素振りすらせず、チャクラ糸で巻物を外套から取り出したサソリは、うっそりと眼を細めた。
瞬間、【白秘技・十機近松の集】の傀儡人形が急に動かなくなる。
関節がギギギ…と唸り、動きが鈍っているのを見て取って、チヨは己の指に巻き付けてあるチャクラ糸を訝しげに見下ろした。しっかり結わえられているチャクラ糸を確認する。
直後、視線をサソリに戻したチヨは、言葉を失った。
愕然として立ち竦むチヨに、いのが駆け寄る。咄嗟に、チヨを庇ったいのは、サソリの傍に見知らぬ人形が浮かんでいるのを視界の端で捉えた。
「【砂鉄時雨】!!」
ぶわり。
虫のような微小な粒状がサソリの周りで浮かんだかと思うと、一斉に飛び散った。それらはチヨの傀儡人形を正確に狙い撃つ。
散弾の如く、降り注いだ時雨。
雨が止んだ頃には、サソリの足元には、チヨの傀儡人形の残骸があった。
【白秘技・十機近松の集】を一瞬で全滅させたサソリを、チヨは苦々しげに睨み据える。
十年以上も前、消息不明となっていた三代目風影。
八方手を尽くしたが見つからなかった砂隠れの里長が、今、目の前にいる。
サソリの人傀儡として。
傀儡化した己自身、更に傀儡師として人形を操っているサソリは「これで二対二だな…」と空々しくチヨといのに視線を交互に向けた。
「どうした、チヨ婆さま?感激のあまり、声も出ないか?」
【白秘技・十機近松の集】の残骸を踏みしめる。
己のお気に入りの傀儡を披露してみせたサソリは、冷ややかな笑みを口許に湛えた。
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