第八章
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「焼いたからですね」
「何度も言うが欧州、ひいてはキリスト教は火葬だ」
「だから吸血鬼でも焼くことはですね」
「望まれないことだ」
「だからですね」
「あの時も驚いたしな」
ネラプシになった娘を焼いたその時もというのだ。
「そして見送る時もな」
「ああした顔だったんですね」
「そうだ、しかし吸血鬼を完全に滅ぼそうと思えば」
「ああするのが一番ですね」
「焼くことがな」
何といってもというのだ。
「そもそも屍があるから吸血鬼になるからな」
「よく悪魔が身体に宿るって言いますしね」
「私が思うには身体にあった元の魂が悪霊になった」
「そして身体も変わってですか」
「吸血鬼になった」
そうした存在だったというのだ。
「私はそう考えている」
「身体がないと悪霊のままですね」
「身体があるから吸血鬼になる、ではな」
「その身体をなくすのが一番ですね」
「そういうことだ、だが燃やすとな」
「ああしてですね」
「嫌な顔をされる」
キリスト教圏ではというのだ。
「東欧でもな」
「そういうことですね」
「だから私達は驚かれたのだ」
前以て許可を得て確認を取っていてもというのだ。
「そしてだ」
「微妙な顔で送られましたか」
「そうなる、しかしな」
「はい、仕事は成功しましたし」
それでとだ、本郷は気を取り直してそうして言うのだった。
「報酬も貰えましたから」
「よしとしよう、何はともあれあの吸血鬼は滅んだ」
ネラプシ、邪眼を持つ強力な吸血鬼はというのだ。
「もうあの村の人達が吸血鬼に何かされることはない」
「それじゃあ万事解決ですね」
「我々がどう思われ様とな」
「それじゃあそのことを喜んで」
「日本に帰ろう、帰ったら祝いにな」
それにとだ、役は運転をする本郷に正面を見つつ話した。スロバキアの車道は左右に森がありそこから妖精や鹿が出てきそうだ。
「京都に着いたら飲むか」
「そうですね、こっちじゃ食えなかったもの食いますか」
「では豆腐か鱧か」
「どっちかで京都の酒を楽しみましょう」
本郷も応えた、彼は自分達が住んでいて事務所もある京都に着いてそこの名物を楽しもうと思った。もう日本の味が恋しくなっていて車のスピードも自然に上がった。
ネラプシ 完
2018・4・16
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