第六章
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「今はな」
「はい、邪眼除けを何枚も使って」
「身を護ろう」
二人で話してだ、実際に彼等はその身に邪眼除けの札を何枚も貼った。それから棺桶を開けるとだった。
一人のスラブ系独特の楚々とした妖精を思わせる整った外観の女性が眠っていた。その顔は確かに整っているが。
肌の色が違っていた、死者の青ざめたものではなく。
血色がよかった、爪も延び髪の毛も伸びているのがわかる。しかも爪や服に土があった。本郷はその土を見て確信した。
「土が付いてますし」
「堀ったからな」
「こうなってるってことですね」
「土葬はわかりやすい」
役もその土を見て言う。
「掘り返さないといけないからな」
「出入りする都度」
「だからわかる、しかしそれを抜いてもな」
「この肌は」
「爪も髪も伸びている」
生きている時と同じくだ。
「ここまで揃っているとな」
「本当に間違いないですね」
「吸血鬼だ」
役は断言した。
「間違いなくな」
「そうですね」
「ではだ」
「はい、今から」
「心臓を貫く」
木の杭と槌を出した、ここで。
「このリンボクの木で作った杭でな」
「リンボクですか」
「この吸血鬼にはこの木だ」
リンボクだというのだ。
「これで心臓、そして頭を貫く」
「そうしてですね」
「その後で止めだ」
それも行うというのだ、こう言ってだった。
役は自分が頭を本郷には心臓を任せ吸血鬼の急所をそれぞれ木の杭で貫いた、一撃する度に吸血鬼は絶叫し恐ろしい叫び声を鬼の如き形相で出したが。
吸血鬼は死んだ、しかしその後でだ、
二人は吸血鬼の骸に今度は油をかけた、そのうえで。
火を点けた、村人達は二人のその行いに思わず声をあげた。
「骸を燃やす!?」
「まさか」
「そんなことまで」
「何でもと言われましたが」
まさにとだ、役はその彼等に落ち着いた声で述べた。
「この通りです」
「燃やすのか」
「火炙りの様に」
「そうするんですか」
「木の杭で倒しましたが念には念を入れて」
そうしてというのだ。
「骸自体もです」
「そうしてですか」
「燃やしてですか」
「その存在を完全に消しますか」
「吸血鬼も火で身体を焼けば」
そうすればというのだ。
「二度と復活出来ないので」
「だからですか」
「ただ杭を打ち込むだけじゃなくて」
「身体も焼いて」
「完全に消し去りますか」
「燃やした後は」
それからのこともだ、役は話した。本郷が火を点けたが彼は陰陽術で火を出しているので普通に燃やすよりも遥かに強力な炎である。
「後は聖水で灰をです」
「灰までですか」
「消すのですか」
「そうするんですか」
「はい、身体を焼いてもです」
そこまでしてもというのだ。
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